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2010年4月27日 (火)

愛の妙藥

 歐州では誰もが知る「トリスタンとイゾルデ」の物語に出て來る惚れ藥を題材とした、ドニゼッティの喜劇《愛の妙藥》を新國で觀た。

 美人で文字も讀める富農の娘アディーナは村の皆に「トリスタンとイゾルデ」の話をし、そんな惚れ藥でもあればいいと笑ってゐた。そして、遠くで見詰めてゐる心優しいネモリーノの好意を感じてはいるのだが、貧農のネモリーノは文字も讀めず、間抜けなところがある。そこへ、やる氣滿々の自信家の軍曹ベルコーレがアディーナに求婚をした爲、何とか阻止すべく、インチキな醫者ドゥルカマーラから「惚れ藥」を買ひ、藥の効き目が出る明日には、アディーナが自分になびくものと信じ切つてしまつた。

 併し、アディーナとベルコーレの結婚披露宴が開かれ、公証人も呼ばれたがアディーナは踏ん切りが附かず、まだサインをしない。効き目のないことに焦ったネモリーノはドゥルカマーラを捕まえて、惚れ藥を強請るが、金がないので、仕方なくベルコーレの誘ひを受け、現金を得る代はりに入隊することにした。すると、ネモリーノの伯父が亡くなり、莫大な遺産が手に入つたと知った村の娘はネモリーノの氣を引かうと皆が言ひ寄り、すっかり藥の効果が出たものと信じ切つてゐる。それを見たアディーナは驚くが、自分の調合した媚藥の所爲だとドゥルカマーラから聞き、入隊契約書を買ひ取り、二人は永遠の愛を誓ふ。ベルコーレは後悔するぞと言ひ捨て、ドゥルカマーラは自分の藥の効き目だと吹聽して立ち去り、幕となる。

 本を主題に、物語に溶け込めるやうにとチェーザ・リエヴィの演出は描き割りや椅子にも臺にも本が使はれてゐる。主人公たちはキッチュな髪の色に原色の服で、如何にもメルヘンのやうな仕上げで惡くない。華麗なタチアナ・リスニックのアディーナ、大きくもっさりとした感じを出したジョセフ・カレヤのネモリーノ、スマートで積極的過ぎるベルコーレを好演した與那城敬、そして狡賢いが憎めないドゥルカマーラのブルーノ・シモーネと役者も揃ひ、アンサンブルもよかった。併し、何かひとつ、かう樂しめない。パオロ・オルミの指揮は東フィルを手堅く纏めてゐるが、極めて中庸のテムポで劇的にならず、何か半端な感じ。真面目に譜面通り間違はずに輕快に彈いてゐるのは認めるが、今ひとつよそよそしい。オケが樂しんで彈いてゐないのだらうか。折角の喜劇らしさが押し出されて來ないのが、とても殘念であつた。

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