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2010年5月13日 (木)

百景

 先月は府中市美術館へ「歌川國芳 奇と笑ひの木版畫」を觀に行き、今月は太田美術館に「廣重『名所江戸百景』の世界」を觀たり、現代浮世繪の六代歌川國政さんの個展へ行ったり、浮世繪憑いてゐる。

 國芳は美人畫だけでなく、幕府に拠つて役者繪が禁止された時に魚や壁の落書きに見立てたり、化け物繪もあり随所に工夫が凝らされて現代の我々が觀ても樂しかつた。それに對して廣重晩年の作の「江戸百景」は、それまでの名所を先人とは別角度から描いたり、廣重が新たに取り上げた箇所もあり、なかなか見應へがあつた。
 「神田明神曙之景」「上野清水堂不忍ノ池」「芝愛宕山」「品川御殿やま」「芝神明増上寺」「兩國花火」… 數へ出したら切りがないが、自分の知つてゐる場所が幾つも取り上げられてゐるのは嬉しいもの。勿論、現在は往事を忍ぶものが殆どないが、それでも嗚呼あすこだと思つて見るのも樂しい。

Bikunibasi 中でも「びくに橋雪中」をどうしても觀たかつた。其処には「山くじら」と大きく看板があり、幕末に猪を食らつてゐた証拠として、牛鍋の前身のやうに語つてゐるのに、本物は見たことがなかつたからである。作品保管上の薄暗い燈りの中で、ぼんやり浮かび上がる繪圖の繊細な線がとても印象的であつた。

 今回は摺りの技法も丁寧に説明書があり、「ぼかし」から、雲母の粉を播いて輝く樣子にした「雲母(キラ)摺り」、布生地の凹凸を紙に押し附けた「布目摺り」、顔料を乘せずに白紙の部分に木版の凹凸を冩して模樣を附ける「空(から)摺り」等、しっかりと觀ることができた。それにしても、大胆な構圖と云ひ、細かい描冩と云ひ、江戸時代の庶民の底力を感じた。


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