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2010年6月30日 (水)

厨房のピカソ

Pg1Pg2 「厨房のピカソ」との異名をもち、分子レベルで料理を考案する「分子ガストロノミー」を生みだしたピエール・ガニェールの新店へ、レス協の集まりで行った。ANAインターコンチネンタルホテル東京の36階に今年、3月に開店したばかり。料理雑誌でしか見たことのなかつた新進氣鋭の尖つた佛蘭西料理を堪能した。

 青山店は親會社の都合により閉鎖したらしいが、コシノジュンジョの制服、波紋を立体化したやうな敷皿、真白だが小鉢から大鉢、平皿など佛蘭西料理の概念を悉く打ち破る。皿の縁にも料理を盛ったり、和食のやうに小皿を幾つも一度に出して第一前菜としたり、真新しいことばかりをしてくれる。古典的な佛蘭西料理しか食べたことのない諸先輩方は目を白黒させてゐた。

 第二前菜のこの阿蘭陀獨活(アスパラ)のヴルーテ(滑らかなもの=この場合、冷製ポタージュの代はり)に蟹肉が浮かび、阿蘭陀獨活のアイスクリーム、生の阿蘭陀獨活の薄切りが添へられる等、斬新極まりない。然も、美味い。
 主菜は豚ロース肉のグリエなのだが、茄子のポワレ、酸味の効いた腸詰め(チェリソー)とコリアンダーのサラダが載せられて、野菜も澤山食べられる。奧に添へられてゐるのが、烏賊墨のピュレにハーブの効いた豚足と豚舌。これは名物のやうだ。自家製のパンも幾つも種類があり、皆食べてしまつた。

 後菜は三皿も出て重い。これは最初のもので杏仁豆腐のやうな滑らかな白い食べ物、そして縁に並べられた菓子類。孰れも美味。この後、果物の後菜、猪口齢糖(チョコレート)と續き、珈琲にてお仕舞ひ。
Pg3

 此処のマネージャー、佛蘭西人のミシェル・ドゥレピンヌ氏は私よりも先のくるっと曲がった髭なのだ。一目見て、お主やるなあと云ふ感じでつひ見入つてしまふが、知人から藤森さん負けてないよと言はれて、ホッとした。冷静に考へれば、敵でもなし、かう云ふ同胞に出會へるのは實に嬉しい。


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2010年6月29日 (火)

三嶋由紀夫

 抽選に當たり、新國の委託作品世界初演のゲネプロへ行った。ゲネプロとは即ち、ゲネラルプローベ、本番直前の豫行演習故、衣装を附けて立ち位置も確認し乍ら通して演奏すること。池邊晋一郎作曲、三嶋由起夫原作《鹿鳴館》。1956年に文學座の爲に書き下ろした戯曲であり、新潮文庫で讀んだことがある。美句麗文が並ぶ愛憎劇と云へるが、池邊がどんな音にまとめるかとても氣になり應募したのだつた。

 中劇場、二階席最前列が用意され、時間になると順不同で席券を貰ひ入場。飽くまでも公開豫行演習故、一階席前方は関係者が譜面を捲り乍ら、時折注意してゐる。
 プッチーニの《トゥーランドット》のやうな旋律、ベルクの《ヴォツェック》のやうに歌と語りを合はせたやうな「シュプレッヒゲザング」、ワーグナーのやうなぶ厚い音の響きの塊など、20世紀のオペラの血を引くのは確か。と云ふか初めて耳にする音に、記憶を総動員して、過去の似た音型を探してゐたのかも知れない。
 日本語の不自然さに、つひ字幕に見入る。鵜山 仁の演出は暗い回り舞臺に丸い高臺がバルコニーのやうに使はれ、横には大きな鏡面の壁があり、場面毎に回る。黒と灰色を基調とした墨繪のやうな衣装は華やかな鹿鳴館の影の一般民衆の氣持ちの代辯するかのやうであり、いつも暗い影を落としてゐる。沼尻竜典指揮の東響もよく頑張つた。美しい旋律で酔はせてはくれないが、歴史的な幕開けに立ち會へたことは記憶に殘る。

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2010年6月28日 (月)

骨折

 伊太利GPでヴァレが骨折したと思つたら、今度は英國GPで日本の切り札(エース)の青山博一が準備走行(ウォーミング・アップ)中に轉倒し、脊椎壓迫骨折により、全治3箇月となつてしまつた。主役二人も欠いた先週末の和蘭GPはひとり氣を吐く西班牙の雄、ホルヘ・ロレンツォの優勝により二連勝。あっけない勝負となった。
 10月に延期された日本GPには二人とも勇姿を見せて欲しい。

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2010年6月25日 (金)

パイプオルガン

 この蒸し暑さで窓を開けて寝てゐるが、未明の大歡聲に目を覺まされた。何事かと思ひきや、裏のアパートに人が集まり蹴球を見てゐたらしい。日本代表が丁抹(デンマーク)を破つた歴史的勝利を朝のニュースで知る。目出度ひ。

Orgel さて、豐洲のららぽーとへ行く。亞米利加の商店集合體のやうな施設に通常用もなければ立ち寄らないが、お晝時と重なりもう空腹にも耐えられず、買物もしたいと云ふ家族の意向には逆らへない。買物すること自體は大好きなのだが、自分の場合、丁度合ふサイズがないので、ブラブラと見るだけで殆ど何も買はない。全く日本の經濟の爲になつてゐない。

 併し、這入ると何処からともなくよい音が天上を傳ひ響いて來る。マイクロフォンを使はない生演奏なのはわかる。何処だらうとふと見上げるとパイプオルガンであつた。アンティークなものであらう。この明るく開放的な空間には似つかはしくないが、天上の高いところはまるで教會のやうでもあり、響きがよい。現代曲は知らないが、其の後、バッハの《小フーガ ト短調》であつた。癖のある演奏だが、面白い。こんなところでバッハが聽けるなんて、何と幸せなことだらう。


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2010年6月24日 (木)

北齋&廣重

 今年は生誕250周年に當たるからか、太田記念美術館で「北齋とその時代」をやつてゐる。前期には「變貌し續ける才能」と題し、役者繪、美人畫、繪手本等分野を超えて挑む姿を同時代の作家と共に展示し、7月の後期には晩年の境地「冨嶽三十六景」の全46作品が出品される。

 そしてこの同時期、山種美術館では廣重《東海道五拾三次》一擧公開を記念して「浮世繪入門」展がある。この保永堂版の《五拾三次》は幾度も重ねて掘られてゐる内に段々と省略もされて行つたが、此処のは初摺り故に、日本橋の朝の出立の繪の左上に雲が描かれてゐたり、随所に違ひがあると云ふ。こちらでは東洲齋冩樂の状態がよく雲母摺りの美しい大首繪《二代目嵐龍藏の金貸石部金吉》や歌麿の《青樓七小町 鶴屋内 篠原》、春信の《梅の枝折り》等も一緒に見ることができる。一時期に浮世繪の二大巨匠の代表作品が見られるまたとない機會となつてゐる。

 お互いに影響を受けたであらう、同時代の作家の個性がはっきりとわかり、とても面白かった。週末の午前と午後に分けて行った爲、餘計に身近に感じられたのかも知れない。海外からもたらされた遠近法、ベロ藍(ペルジアン・ブルー)等、最新の技術や材料を使ひ果敢に取り組んで行つた姿勢や人間性まで透けて見えて來る。

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2010年6月23日 (水)

東京藝術學舎

 昨年、學藝員の資格を取る爲に通信教育で學ばせて貰つた母校、京都造形藝術大學の東京での拠點が移轉する。これ迄は人形町のサテライト・キャンパスであつたが、七月から外苑に移り新たに「東京藝術學舎」となる。JR中央線の信濃町驛乃至地下鐵、青山一丁目驛からも近く、明治記念館の向かひ側に當たる場所。然も、開業記念講演が凄い。千住博學長は勿論、辻仁成(小説家)、小山薫堂(放送作家)、松平定知(NHK元實況放送人)、松任谷正隆(音樂製作責任者)等、第一線で活躍する人ばかり。全て無料だが事前申込みが必要となる。何かひとつでも受けてみようと思ふ。

體驗オープンカレッジ開講

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2010年6月22日 (火)

復活

Kawasaki 今年は生誕150周年と云ふことでグスタフ・マーラー(1860-1911)の演奏が目白押しである。11月にはロイヤル・コンセルトヘボウの《復活》に維納フィルの9番もあるが、日本のオケだつて負けてはゐない。

 エルアフ・インバル指揮、都響のマーラーの交響曲第二番《復活》を聽く。3月末の三番の演奏が餘りに素晴らしく、再度聽きたくなつた由。1989年であつたか、90年に伯林のフィルハーモニー(ホール)でシャイー指揮のリアス放送響とブリギッテ・ファスベンダー(Ms)の生演奏で度肝を抜かれて以來、メータ指揮の維納フィルの録音盤で樂しんでゐた。1996年のアバド指揮の伯林フィルも忘れられないし、近年ではメータ指揮の混成オケと藤村美穂子も素敵であつた。

 1991年から都響を振つてゐるインバルなので、隅々まで心配りの利いた演奏であつた。かなり誇張もあるとは思ふが、遅めのテムポでじっくりと聽かせる。イリス・フェルミリオン(Ms)は四樂章の出端からやや大きめであつたが、發音がよく聽き取り易い。三階中央に合唱の聲もよく混ざり、渾然一體となつて響き渡る。ノエミ・ナーデルマン(S)も出しゃばることなく、釣り合ひの取れたハーモニーとなつた。今かうして音の渦に浸れる喜びが沸々と湧いて來るのだ。室内樂的な響きもよいが、矢張り金管樂器が高らかに歌ふ箇所は背中がぞくぞくとして昂奮も増す。舞臺裏からも演奏するのだが、その人たちも齒切れのよい音を奏でてくれた。

 サントリーホールよりも好きな音響かも知れない。残響も程良く、音の粒がくっきりとして、樂器の個性がはっきりしてゐるから。勿論、都響のことだから相變はらず荒削りなところはある。特に管樂器の出だしはおっかな吃驚としてはっきりしないのが氣にはなつた。東京文化、ミューザ川崎、そしてサントリーホールと續けて三回同じ曲を彈く第700回記念定期演奏會の爲、中弛みしたのかも知れない。まあ、それもよしとしよう、充分樂しめたから。

慣れ親しんだCDはこれ


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2010年6月21日 (月)

美人畫

 「男が描く男・女が描く女」展を觀に銀座一丁目の柴田悦子畫廊へ。グループ展示なのだがその中の一人、中千尋さんからご案内を頂いた。大膽に草木を描いた墨繪を得意とする彼女がどんな女性を描くのかとても興味を抱いた。ご本人曰く「美人畫」だと言つてゐると云ふ。

 三枚だけの出品であつたが、和装の女性ばかり。絽の羽織、相撲の幟を背景にした艶やかな藝子さんであつたり、ご自身が普段から着物を着慣れてゐる感じが出てゐる。確か、お茶や踊りもされてゐたと聞く。題材は古くからあるものなのに、古くささはなくて、顔は平成美人。

 丁度、眠りや瞑(ツブ)るを題材にしたコヤマイッセーさんともうひとり作家さんもゐた。小さな畫廊だとかうして作家さんと直に顔を會はせて、直接尋ねられるのがいい。奥津直道さんは筋骨隆々の男性像、木村浩之さんは薄暗い相撲等、30代の作家の新しい感性が並ぶ。

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2010年6月18日 (金)

筋廻袋表具

Ji 表装教室に通ひ出して早一年半。やつと五作目が丸々四箇月も掛かつて完成した。今回は筋入りが天地(テンチ)横の他、天の筋風帶の筋幅を五厘(リン)とし、二本で一分(ブ)。仕上がり幅を三で割り、この筋幅二本分の一分を引いた幅を中心幅にする。普段、計算機ばかり使つてゐるので紙の上で計算するのがたいへん。割り切れないので、物差しの目盛りの間を目分量で切る。かうなつては、眼鏡は必需品なのだ。
 その上、裏打ちした裂(キレ)を真ッ直ぐに切るのは勿論、一分の幅に糊を附けて專用の覆輪定規(フクリンヂヤウギ)を當てて筋幅五厘になるやうにして繼ぐ。貼り附けたら紙を當てて、輕く金槌で叩いてしっかり接着させる。慎重に慎重にやつてゐる筈が、完成してみるとあちこちおかしい。まだまだ、修業が足りない。


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2010年6月17日 (木)

バイロス

 挿繪畫家フランツ・フォン・バイロス(1866-1924)の「背德のシンフォニア」と銘打つた展覧會を銀座のヴァニラ畫廊へ觀に行く。アール・ヌーヴォーからロココ調の装飾過多でゐて、淫靡な雰圍氣のある繪ばかり。名前は知つてゐても實物は初めてであつた。

 百貨店、松阪屋裏の雑居ビルの4階で出逢つた。この畫廊はどうやら、淫靡な繪を得意とするらしい。「ラブドール」や「伊藤文學コレクション~薔薇族周辺のゲイ・エロティックアート」を過去に開いてゐるだけでも異色。ごく普通の畫廊の筈だが、先入觀からか獨特な雰圍氣を感じ取つてしまふ。小さな作品ばかりなので額装した繪が二段になつて、明るく見易く展示してあつた。

 どの繪も卑猥。オーブリー・ビアズリー(1872-1898)と同時代の人なので、あの細密で小惡魔的なところは似てゐるかも知れない。暗い畫面に妙な格好をしてゐて、ふしだらな裸體が絡む構圖。廢退的と言つてもいい。紫煙の曇る、お金持ちの秘密倶樂部に這入り込んだやうに錯覺して來る。印刷されたカラー畫であらうと、陰湿でエロスな世界を廣げてゐる。晩年の大作ダンテの『神曲』(1921)の豪華挿繪入本も硝子ケースに入つて販賣してゐた。ラビリンスに足を踏み入れてしまつたのかも知れない。

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2010年6月16日 (水)

はやる氣持ち

 新國で歌劇《カルメン》を觀る。世界で最も上演回數の多い《カルメン》であり、何度觀たかも覺へてゐないし、多くの旋律が頭に入つてゐるだけに、多少下手でも小氣味よいテムポでぐんぐん進んでくれさへすればよい。さうすれば、西班牙情緒たっぷりの旋律がセヴィリアの街へと連れて行つてくれる。

 鵜山仁演出(2007年)の再演なので、合唱の動きもよく、無駄が無い。但し、マウリツィオ・バルバチーニの指揮は今まで聽いた中でも最も速く、きちんと歌わせてもゐるが、オケが附いて行つてゐない。東フィルにやる氣を全く感じない。然も、低音弦樂器を下手、木管を中央、金管を上手に配した爲、どうも音の釣り合ひが惡い。二階上手奧席故、金管が大きく聽こえ

序曲の頭からその速さに附いて行けず、アンサムブルが亂れる。カルメンはたっぷりと引き摺るやうに歌いたがるので、ぎくしゃくとした居心地の惡さも感じた。歌手陣は聲に伸びがなく迫力に欠けるものの、及第點か。

 演技だけを見れば、肉感的に魅惑を振りまくキルステン・シャベスのカルメンはファム・ファタルらしく、トルステン・ケールは田舎出身の優男が堕ちて行つても惡人に成り切れないドン・ホセをよく演じたが、ジョン・ヴェーグナーのエスカミーリオは年が行きすぎた老いぼれた感じでフェロモンたっぷりの魅惑な闘牛士には似つかわしくなかつた。そして、純真可憐な田舎娘のミカエラを濱田理惠が好演。

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2010年6月15日 (火)

南阿弗利加

 四年に一度の蹴球(サッカー)世界杯(ワールドカップ)の折にしか應援しない俄かファンではあるが、深夜の放送に見入つてしまつた。練習試合で結果も殘せず、岡田監督の前評判も惡く、心配で仕方なくて、大差で負けて正直正視できないのではないかと思つてた。

 遠く離れた南阿弗利加の高地での試合は並大抵のことではないだらう。海外生活の苦勞を思ふと、つひ應援にも力が入るが、意氣地がないので前半はニュースを見乍ら時折眺めるやうな感じで、得點が入つた場面は録畫で知つた。だいたい、初ッ端からきちんと見てゐないので、「江藤」と云ふ選手は誰かと思ふ程、味方も敵のことも全然知らない。それが相手國カメルーンの「エトー」と云ふ選手だと途中で判つた位、お粗末な應援である。實に申し譯ないが、深夜起きてゐただけでも勘辯してもらはう。

 以前から、糞生意氣に豪語してゐた本田圭佑選手が有言實行して勝ち點を擧げた場面は素晴らしかった。精神力の強さ、強靱な肉體に迷ひは全くない。その一蹴りが一生を左右するかも知れないだらうに、憑きも味方に附ける強運。恐れ入つた。初戰白星發進目出度ひ。勝利を祝福するやうに昨夜の雨も上がり、清々しい。


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2010年6月14日 (月)

白川 靜

 漢字の語源を中國の占ひに使はれたと云はれる甲骨文字に迄遡つて研究された白川靜翁(1910 - 2006)。以前、『白川静さんに學ぶ 漢字は樂しい』を讀んでゐたが、他の字も氣になつてたうたう新訂『字統』を手に入れた。アから順繰りに始まる辭書なので、讀み通す必要はない。併し、時折氣になつて開くと、同じ頁の他の文字も讀めてしまふのは電子辭書にはない樂しさ。

  例へば、「朗」を引いてみると、元の字は月偏にと書き、月明かりの朗照の意味だった。その光が朗々としてゐるので、朗悟、朗讀、朗誦、朗吟と使はれるやうになつたと云ふ。月明かりで「朗(あきら)か」なのであり、「朗(ほが)らか」なのだ。

 『白川静さんに學ぶ 漢字は樂しい』にも出て來る「戻」の舊字は「戾(PC環境に因り表示されないかも知れないが)」なのだが、「戸」の下に「犬」と書く。これは戸下に犬の生贄を埋めて呪禁したことに由來するのだと云ふ。無事に戻れるやうに、呪(まじな)ひで、災ひを呼び込まない工夫なのだが、戸口に犬を埋めるとは現代人にしてみれば何とも不氣味である。でも、面白い。


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2010年6月11日 (金)

拘り

 日本獨逸ワイン協會聯合の役員會で知り合つた監事の木下勝實さんの本を讀んだ。古賀守先生を支へ、ワインと文化に就いて述べてゐる。『坂の上の雲』にも登場するクレメンス・メッケル大佐は故郷モーゼルのワインが日本でも飲めるか否かで來日を決めた話や、古賀先生の思ひ出話、最初から一流ワインの輸入を開始した頃の苦勞話など興味は尽きない。

 今月の弊社のお知らせ『汽笛一聲…上氣嫌』と共にお送りしてゐるご案内の中で、古賀先生と淺田勝美さんの出逢ひを書いたのだが、試飲後直ちに在庫のワインを頂きたいと言つたことが此処にも出て來る。併し、自分が聞いたのは「百數十本」とのことだつたが、當時經理をされてゐた木下さんはこの著書の中で

 「倉庫にあつたのは第一回の輸入分で、銘柄ではおよそ三十種類、本數にしておよそ三千本」 155頁

と記録してゐたので、この場で訂正する。メモをきちんと取らなかつた自分がいけないのか、淺田さんが間違つて傳へたのか、今となつては確かめようがないが、數字的に大きな差であった。

 南國のワインはアルコールが高いが獨逸のワインは酸味が主體でアルコール度數が低く、飲み疲れしない。久し振りに飲むとホッとするのだ。幹事の末席に加へて頂いたので、これからは心して獨逸ワインをまた飲まう。
 「獨逸ワインは別の飲物」と言つて憚らない木下さんに乾杯。


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2010年6月10日 (木)

未来に備へる經驗値

 只、現在を謳歌するのに過去を捨ててしまつた日本人は、先が讀めなくなり、おろおろしッぱなしとなつた。だから本を讀めと、橋本治は云ふ。それも、單に文字を追ふのではなく、行間を讀めと。安直な答へなんか勿論存在しないが、そこには本の受け手が存在し、面倒なことは他人任せに、仕事だけをすればいい時代ではないのだと。

 モノとカネがグルグル回るだけの經濟が、汗水垂らしてモノを作らず、人のカネを動かすだけで儲ける時代に、唯一「一億総中流」と云ふどの國もなし得なかつた繁榮を迎へた日本はそれにも氣附かずに金持ちになつた。地球が閉じてゐる以上、經濟にも限りがあるのだから、これからは縮小するのが當たり前であつて、ずっと伸びる譯もない。まづは本を讀まうと云ふ姿勢には共感する。


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2010年6月 9日 (水)

 新國でリヒャルト・シュトラウスの大作《影のない女》を觀る。1984(昭和59)年に來日したハンブルク國立歌劇場の公演を觀て以來の生オペラとなった。當時、レオニー・リザネク(1926-1998)の壓倒的歌唱力に平伏し、獨逸オケの底力を感じさせる大音響と繊細な室内樂的な響きに度肝を抜かされ、日本人には演奏不可能だと思つたもの。

 あれから四半世紀も過ぎれば、東京交響樂團とは云へ、技量も上がり、十二分に滿足させるだけの音質に向上し、素晴らしい演奏となつた。廣瀬大介さんの作品解説に拠れば「影が、子供を産む能力、母親となることのできる能力の象徴として扱はれる」ことを押さへてゐれば、象徴的な筋書きも理解できると云ふやうに、ホフマンスタールとの協同作業は、第一次世界大戰後の荒廢した世の中で、明日への希望をもたせた内容となつてゐる。

 靈界の王カイコバートの娘が人間界の皇帝の妻となつたものの、影を得られなければ皇帝は石になつてしまふことから、貧しい染物屋バラクの妻に富と若い男と引き換へに影を得ようとする。併し、人間の愛に触れて、誰も犠牲とせずに運命を受け入れようとする皇后に、カイコバートも心打たれて呪ひを解き、二組の男女が結ばれる話。

 ドニ・クリエフの演出は家と石垣が分解、壊されては前後左右に移り、再構築することにより、場面轉換の流れを滑らかにして、心理的な象徴の役割も持たせ、恣意的ではなく考へ抜かれたものであつた。但し、エーリヒ・ヴェヒターの指揮は凡庸であり、劇的な表現に乏しく譜面通りの演奏をしたに過ぎず勿體なかつた。獨唱歌手陣は遜色なくアンサンブルの良さを發揮してゐたが、その中では特にバラクの妻役のステファニー・フリーデの歌唱力は抜きにでて力強く響き渡り、豪華であつた。

 1919(大正8)年に維納(ウィーン)で初演した際は、フランツ・シャルクの指揮の下マリア・イェリッツァの皇后、ロッテ・レーマンのバラクの妻と云ふシュトラウス大のお氣に入りの歌手を配し、さぞかし素晴らしかつたことだらう。勿論、全曲はおろか抜粋すらないが、78回轉盤の短い演奏では片鱗しか伺ひ知ることはできない。併し、彼女らの歌聲には、そこはかとなく漂ふ維納の香りが見え隠れする。

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2010年6月 8日 (火)

ヴァレ骨折

Rossiitalia MotoGP王者ヴァレンtネィーノ・ロッシが伊太利グラン・プリの練習走行中に轉倒し、ヘリコプターで病院に搬送されて即手術となつた。右脚脛骨(ケイコツ)を骨折して骨が飛び出る重傷な上、同じ右脚の腓骨(ヒコツ)も折れてゐたと云ふ。資金不足から練習走行を減らされ、各走者共に無理をしてゐるのかも知れない。手術を擔當したロベルト・ブッツィ醫師は、順調に回復してゐると説明したものの、「完治には4~5箇月は必要」との辯。だとすると、今期のタイトル防衛はもう絶望的。それに、ヴァレの居ない競走(レース)自體が精彩を欠く。ヴァレの居ないことすら全く想像できない。特にヴァレの場合、1996年に125ccに初登場以來、これまで15年間に續けて來た最多連續出場記録230戰で途絶へることになつてしまつた。早い恢復を祈るばかり。


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2010年6月 7日 (月)

Frame 先月は奈良から友人が訪ねてくれた。すき燒が食べたい、蓄音器が聽きたいの他に、ツェッペリン飛行船蒐集品を見たいと云ふので、色々と引ッ張り出してご披露した。
 これはその時まだ入手してゐなかつたツェ伯號オリヂナルのフレーム(枠)!


の筈である。
 裏書きを見るとヒンデンブルク號の事故の後、ニュージャージー州、レイクハーストに在る海軍飛行船格納庫に殘されたものと書かれてゐる。米海軍錨印に216878と番號も振ってあるので、それらしい。腐食防止の爲、青い塗料を塗つてゐたのは、フリードリヒスハーフェンに在るツェッペリン博物館で見てゐるから、十中八九本物。社の刻印の入つた器や書籍なら、見間違ふ筈もないが、個人蒐集家のものだと、絶對とは云ひ切れない。

Frame2


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2010年6月 4日 (金)

コピ・ルアク

Luak 印度尼西亞(インドネシア)の幻の珈琲「コピ・ルアク(Kopi Luwak)」をつひに飲むことができた。麝香猫の糞から採れる未消化の珈琲豆を焙煎したもの。動物の排泄物だと思ふと氣も引けるが、これを飲まずして珈琲は語れないだらう。何でも麝香猫腸内の消化酵素や腸内菌に因り醗酵して、獨特の香りがあるらしい。

 お土産で頂いたもので、袋には「ルアク」としか書かれてゐない。それはどうやら100%コピ・ルアクではなく、少しは混ざつてゐるものだとのこと。我が家では濾紙を使つて淹れるが、輕い味はひで自分が鈍感なのか特別な香りは感じなかつた。100%コピ・ルアクだとどんな香りなのか非常に氣になる。

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2010年6月 3日 (木)

横濱

BaybridLandma 横濱まで船上の人に。東京灣から望むベイブリッジ、ランドマークタワー。
 重油の臭ひで、自分も35年前に乘船したことを思ひ出す。

Hikawaそして氷川丸。


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2010年6月 2日 (水)

衝撃走る

 「ツェッペリンNT號」を運行してゐた日本飛行船が倒産してしまつた。負債総額14億圓だと云ふ。出資はしてゐなかつたがとても衝撃だ。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3286.html

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2010年6月 1日 (火)

勃牙利葡萄酒

 Burgarian 勃牙利(ブルガリア)ワイン企劃に參加した。題は「樂しみ乍ら學べるブルガリアワインの美味しい飲み方」と云ふもの。急遽、ワインの講師として招かれたのだが、細かい打ち合はせもなく、當日いきなり故、嚴しいものがあつた。ワイン産地の地圖もなく、各ワインの細かい説明もなく、早くから分かつてゐれば、それなりの資料も準備できただらうに、殘念であつた。

 輸入商社を立ち上げた金宮ラズロさんの解説で幻燈を見た後、試飲會。まづ、試飲の仕方を傳授して、香りや味はひの共通項を探す。そして、勃牙利産の乾酪(チーズ)やパプリカのロースト、トマトペーストをパンに塗ったものをつまみにして飲む。希臘(ギリシア)のフェタのやうな堅い豆腐状の羊の鹽辛い乾酪はそのままだとボソボソなので、バターと練って、パンに塗り、蜂蜜を掛けて食べると圓やかな味はひとなる。また、獨特な香辛料を掛けるだけでも、食欲が進む。

 過去に世界一の輸出量を誇つたことがある勃牙利だが、タンクで輸出した安價なものだけで、ブレンドやブランデーの原料に使はれる程度の、表に名前の出ないろくでもないワインだけだつた。併し近年、近代的設備の整つた醸造所ができ、最新の技術で醸造されてゐる所爲か、テラ・タングラ社のワインは豫想以上に美味しいものだつた。特に勃牙利獨自の品種マヴルッドは、野性味に溢れるものの抜栓してから一時間程度で華開き、熟成した赤い果實やジャムのやうな濃縮感、それにカベルネとも違ふ厚味を備へたものだつた。

 勃牙利出身の力士、琴歐洲が宣傳大使に任命され、母國の宣傳に一役買ふことになつたらしい。最高級の單一畑のワインは試せなかつたが、ボルドータイプの混醸ワイン「TT」もなかなか個性的でよかった。これから、徐々に勃牙利ワインも浸透して行くだらう。

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