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2010年6月29日 (火)

三嶋由紀夫

 抽選に當たり、新國の委託作品世界初演のゲネプロへ行った。ゲネプロとは即ち、ゲネラルプローベ、本番直前の豫行演習故、衣装を附けて立ち位置も確認し乍ら通して演奏すること。池邊晋一郎作曲、三嶋由起夫原作《鹿鳴館》。1956年に文學座の爲に書き下ろした戯曲であり、新潮文庫で讀んだことがある。美句麗文が並ぶ愛憎劇と云へるが、池邊がどんな音にまとめるかとても氣になり應募したのだつた。

 中劇場、二階席最前列が用意され、時間になると順不同で席券を貰ひ入場。飽くまでも公開豫行演習故、一階席前方は関係者が譜面を捲り乍ら、時折注意してゐる。
 プッチーニの《トゥーランドット》のやうな旋律、ベルクの《ヴォツェック》のやうに歌と語りを合はせたやうな「シュプレッヒゲザング」、ワーグナーのやうなぶ厚い音の響きの塊など、20世紀のオペラの血を引くのは確か。と云ふか初めて耳にする音に、記憶を総動員して、過去の似た音型を探してゐたのかも知れない。
 日本語の不自然さに、つひ字幕に見入る。鵜山 仁の演出は暗い回り舞臺に丸い高臺がバルコニーのやうに使はれ、横には大きな鏡面の壁があり、場面毎に回る。黒と灰色を基調とした墨繪のやうな衣装は華やかな鹿鳴館の影の一般民衆の氣持ちの代辯するかのやうであり、いつも暗い影を落としてゐる。沼尻竜典指揮の東響もよく頑張つた。美しい旋律で酔はせてはくれないが、歴史的な幕開けに立ち會へたことは記憶に殘る。

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