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2010年7月26日 (月)

一寸、待った!

 グループ交際した男子が本命女子に告白する際、それを阻止しようと他の男子が驅け寄って「一寸、待った!」と云ふ場面がテレビではよく流れる。けふの本題は歌舞伎の《暫》。

 惡人に難癖附けられ、あはや首を切られさうになつた善人を、惡靈を拂ふ靈力を持つ超人が助ける時に「暫く(待て)!」と聲を掛ける。超弩級の派手な装ひも魅力なのは、元々毎年の顔見世興行に加へられる「吉例」であつた爲、物語を見ると云ふよりも、大勢の役者を紹介する必要があつた。テレビでしか見たことがなかつたので、團十郎のお家藝を演舞場で樂しんで來た。

 このヒーロー、鎌倉権五郎景政(かまくら ごんごろう かげまさ)は「筋隈(すじぐま)」と云ふ赤い隈取りに、「車鬢(くるまびん)」と云ふ蟹に角まで生えたやうな髪型、お守りの髪結ひ、袖の中に十字に竹を重ねて、まるで羽のやに廣げ、團十郎家の三升紋(升を三つ重ねた形)を大きく染め抜いた海老茶色した「素襖(すおう)」という衣裳に、六尺三寸の大太刀を振り回す。兎に角、デカさを強調してゐる。

 一方、惡人の清原武衡(きよはらの たけひら)は身分は高いので「公家荒れ(くげあれ)」と云ふ青い隈取りで憎々しげ。こいつは権力者だから、命令するだけ。そして、「鬢(びん)」の毛が鯰の髭(ひげ)のやうに長く伸びた入道震斎(にゅうどうしんさい)は鯰坊主(なまずぼうず)と呼ばれた道化役。
 實際に暴力を振るふ敵役たちは関取のやうた體格で腹を出し、全身赤く塗つてゐるので「赤ッ面」と云ふ。それに女スパイの照葉(てるは)だとか、兎に角豪華な舞臺。我々の世代はウルトラマンが怪獣をやっつける痛快さを喜んだが、江戸時代の人も同じだつたのだらう。

國立劇場提供の錦繪

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