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2010年12月 6日 (月)

理想郷

 1937年の米映畫『失はれた地平線』に出て來るヒマラヤ奧地に在るとされる理想郷(シャングリ・ラ)。は實在の冒険家ジョージ・リー・マロイに触發され、ジェームズ・ヒルトンの冒険小説の映畫化だが、今も公開當時のまま「失はれた」と表記するのが嬉しい。この理想郷を指す言葉を冠したホテル東京でレス協の納會があつた。
 その前に客室見學會もあり、七萬圓の通常部屋、見晴らしのよい八萬圓の部屋、寝室の他にもう一部屋あるスイート(二拾萬圓)を見せて貰つた。特注の百五拾萬圓の寝臺、間近に遮るビルがない爲、風呂場からも夜景が見え、更に百五拾萬圓の部屋まであると云ふ。恐れ入ったが、庶民には到底泊まることはできない。

Nadam1Nadam2Nadam3納會は「なだ万」。50名ものお客に同じ料理を手早く、均一の質で提供できるのは素晴らしい。然も手の込んだ献立なのだ。先附だけでも、白海老・ちちゃとう・長芋・甘海老鹽辛・真魚鰹西京燒・射込み赤伏見唐辛子・鮑柔らか煮餅粉揚げ 共肝ソース・鯖小袖ずし 銀杏松葉刺し・の巻パン キャビアと豪華この上なく、山海の珍味が並ぶ。
 續いて出て來た羮(アツモノ=スープ)は上海蟹スープ蒸し 鱶鰭(フカヒレ)餡。絶品と云ふ言葉くらいしか思ひ浮かばない。鹽加減、茶碗蒸しのやうな柔らかさ、繊細な餡が口の中で渾然一體となる。本鮪、甘海老、あら昆布〆、寒鰤(カンブリ)の造りには土佐醤油と胡麻醤油が附き、旨味と香ばしさを樂しめる。

 そして、煮物には小鍋蕪仕立てとなつて、ひとりひとり炭火の小鍋で供出される。然も、火が通るので最初はぬるい程度のお出汁が段々と食べ進む内に温まる心憎い演出。甘鯛、車海老、蛤、刻み野菜に針柚子と贅澤が續く。
 白魚の酢の物、鱈場蟹の炭火雲丹燒と赤ムツの一夜干しも素敵で、釜炊きご飯には貝柱、大根、炙り唐墨まで入つてゐて、數人づつ炊いた釜を見せてくれる演出。赤出汁、香の物と附き、マスカルポーネの白い汁粉を食べた頃には、既に理想郷へと到達してゐた。


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