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2010年12月10日 (金)

桔梗ヶ原

 信州「桔梗ヶ原」と聞いて、ワイン好きならメルシャンの造る最高級ワイン「桔梗ヶ原メルロー」を思ひ浮かべることだらうか。

 昨夜、東京公演を聽く。重鎮級は來られないものの、若手育成の場とも云ふべき12月公演は安壽と厨子王の物語《由良湊千軒長者》と《本朝廿四孝》。鷗外の『山椒大夫』の原作とも云へるもので、溝口健二の映畫で慣れ親しんでゐる。また、《廿四孝》で自分が觀たことがあるのは、八重垣姫の〈十種香の段〉〈奥庭狐火の段〉場面なのだが、今回は山本勘助誕生秘話のやうな段組は初めて。

 その《廿四孝》の三段目にけふの外題の〈桔梗原の段〉が出て來る。舞臺中央が國境で、兄の子供を育てる爲に實の子峰松を捨てる場面。枯れ須々木の寒々とした盆地の樣子が描かれ、國境に於ける甲斐の武田家と越後の長尾家との確執がよく描かれてゐる。此処で今はワイン用葡萄が造られてゐるかと思ふと感慨深い。
 そして、物語は弟慈悲藏は實は長尾の家來、直江山城之助であり、不孝でがさつな兄が實は切れ者の策士で、父の名を繼ぎ勘助となり、既に武田家の家來であり、將軍の幼君を匿ひ、源氏の白旗を守つてゐたと云ふ大團圓を迎へる。

 前半の《由良湊》はつばさ大夫、希大夫が清丈の力を借りて何とか作品にした感じで、まだまだ力不足。聲が出てゐないので、情が傳はらない。それに對して《廿四孝》は床が回る度に段々と大夫の語りが上手になるのが面白かつた。相子大夫は落ち着きが出て來て、三輪大夫はややビブラートがきつくて聞き取り辛く、呂勢大夫は力が附いて嫌味がなく、津駒大夫は滿遍ないがやや演じ分けが不足するものの、後の文字久大夫は力演なのに空回りしてつまらなかった。三味線で寛太郎が當たり障りなく無事に切り抜け、清友は貫禄が出て、燕三や富助は安心感が出て、後の錦糸の手數の多い段では終始冷靜に確實に彈き切つてゐた。かう云ふ力量の違ひも判るやうになつたのも樂しい。人形は和生が演じた勘助の母と勘十郎の直江山城之助が氣持ちがビシビシ傳はつたが、玉女の勘助は動きが大きいので大味となつて殘念であつた。

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コメント

失礼します。「役不足」の用法を間違っておられるのではと・・
あと後半の演奏者は舞台稽古がなくいきなりお客様の前で初日をつとめるらしいですね(舞台稽古は初日から=前半の演奏者だけらしいです)、だからといって甘えは許されませんが、気が張るのは事実でしょうね

投稿: n | 2010年12月15日 (水) 05時00分

ご指摘ありがたうございます。>nさん

「役不足」では「役目が不相應に輕い」と云ふ意味ですから、この場合、「力不足」と書かねばなりませんね。訂正致しました。

投稿: gramophon | 2010年12月15日 (水) 18時29分

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