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2010年12月17日 (金)

食のあり方を考へる

 友人の誘ひで、辰巳芳子講演會「食のあり方を考へる クリスマスの集ひ」に參加した。ご自身の介護經驗からスープの大切さを説き、食事の重要性を訴へ續けてゐる、御年86歳の料理研究家として知られる大先生。私も何冊か讀んでをり、「出汁」の重要性を考へてゐたところであつた。


 ほんたうに大切なことは、言葉にならないものであり、食事も蔑(ナイガシ)ろにしてはいけない。スープを手掛けて早50年、スープの向かうにあるのは優しさである。飲む人はその優しさに癒され、作る人は我を通さない、優しい人でないとできない。出汁を引くなんて面倒臭ひかも知れないが、何年も繰り返すことで優しい人になれる。

 生物としてのヒトが人になるために食べる。食べるものがあつて當たり前と云ふのは大きな間違ひ。死なないだけの食事は命との結び附きを考へてゐない。料理を作るのは人の命を祝福することであり、食べる行爲は命への敬ひとなる。

 一日三食何を食べたか、何を食べたいか、何を食べねばならないか、一週間統計を取ると解つて來るものがある。20、30代の獨身者は朝食を抜き、菓子パン、出來合ひの飲料水が多く、おみおつけを食べず、お浸しは皆無、煮附けもなく、煎茶もいれない死なないだけの食事ばかり。これでどんな働きができると云ふのであらう。

 低體重兒、帝王切開が増えてをり、終戰後の食糧難の時も酷く、かう云ふ子は40代に入ると急激に老化もする。これは社会的損失であり、認識をもって食べる人になつて貰ひたい。5年、10年先にも生きて行けるやうに食べていかねば、いざと云ふ時に慌てることになる。

 ミケランジェロのパワーの源、坂本龍馬の柔軟な發想の源は何か。現地へ行つて調べたら、仔牛の出汁や鰹のアラ汁であつた。半年育つた仔牛から、たいへんな手間と時間を掛ける作る出汁に比べてば、2~3分でできる鰹と昆布の出汁は實に簡單。一週間分作り置きをして冷藏庫で保管して欲しい。

 自分を發見するのも體力、前へ進むにも體力が要る。その人が行きたいところに行けるやうに食べさせる。辿り附けるやうに食べなさい。明日からでも食生活を變へることがまづ第一歩。


さう云ふお話でした。話の途中、

 「食べるとは、何に向き合ふべきか。そこの眼鏡の男性、お答へください。」

えっ、それは私を指してゐたのだ。會場の人々の視線が刺さり、何?何?考へが驅け巡る。 

 「…」

 「私はねえ、年寄りだから大きな聲でお願ひします。」

 「命を育むことでせうか。」

 「さうですね『命』です。よいお答へです。」

先生と共鳴するところがあつてよかつた。食に関はる者の一人として認められた氣がした。

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