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2011年7月29日 (金)

FM世田谷

 FM世田谷(83.4MHz)の毎週土曜日17時から放送されてゐる脇本カオルの「カオルのMusictrain Cafe」があるが、先日その収録が日比谷アーカイブ・カフェであり、來客として呼ばれ「蓄音機」の話をして來た。

 テレビと違ひ映像がない分だけ、言葉だけで説明するのは難しい。然も、冷房の効かない昭和なカフェ内となると大汗をかき乍らの収録となつた。それでも、脇本さんが上手に話を振つてくれたお蔭でなんとか無事修了。明日の夕方放送となる。遠方では無理だが、世田谷近邊の方は是非耳を傾けてみては。

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2011年7月28日 (木)

苦界

 苦しみの多いこの世を指して「苦界」と云ふが、すきや連の句會はずっと苦界であつた。だいたい、その場で季語を頂いても全く浮かばないし、何時何時迄に提出と云はれても、その邊りにほったらかしにしてゐて、なかなか取り掛かれない。催促されてやっとメールでぎりぎりに出した。すき燒句と夏の句の一句づつ提出し、集まつたこところで自分以外の句それぞれ二句選び、最高得點が特選となる。自分の句は

 すき燒の鍋を囲めばにこやかに

 日差し避け幹に連なる空蝉の

 どちらも二點頂いた。夏の句は自分が日差しを避けて木陰に行つた時に、蝉の抜け殻をびっしり連なつてゐる情景を詠んだもの。それで、繪硝子主催の俳人、和田順子先生から少し直して頂き

 木陰かな幹に連なる空蝉の

にしたらと指導して頂いた。成る程、その方がすっきりしてよい。この日の特選は六點入り、向笠千惠子さんの

 すき燒きに百の家族のものがたり

が選ばれた。ゆくゆくはすき燒の句だけを集めた「句集」を出したいと云ふ。暫く、苦界に沈みさうだ。

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2011年7月27日 (水)

血みどろ

 師匠の新刊本が出たと知り、直ぐに注文。浮世繪がご專門で、特に月岡芳年の血みどろ繪がお好きな方故、行間から樂しさうな師匠な顔が浮かぶ。下手なアニメよりも餘程面白い。

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著者:菅原 真弓
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2011年7月26日 (火)

盛況でした

23日(土)の新蓄音機の會は無事に終了した。22名の方々が驅け附けてくださり、靜聽してくれたお蔭で、格調高い演奏會の雰圍氣となつた。こちらも氣合ひを入れて麻の背廣で解説を交へて、針をセットして、撥条(ゼンマイ)を回し、サウンド・ボックスを78回轉盤の溝に合はせると、嚴かに鳴り響き出す。この時だけ、自分のサウンド・ボックスHMV5Aに取り替へた爲、いつも通りの鳴りに安心した。天井が高いのでよく通る。

 ワーグナーの歌劇《ローエングリン》第一幕への前奏曲はトスカニーニ指揮、NBC響HMV DB21574 (1951)、
ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》第二幕より〈愛の二重唱〉はフラグスタート&メルヒオールと云ふ最強のコンビでVictor 15960A/63A(1939)そして、ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調《運命》全曲をフルトヴェングラー指揮、伯林フィル HMV DB3328/32S(1937)で、高らかに獨逸魂を歌ひ上げた。
 次回は9月にマーラーの《大地の歌》の豫定。

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2011年7月25日 (月)

新橋ステンション

Simbashi_stenshon_2 明治大正期に活躍した浮世繪師、小林清親(1847-1915)の作品に《新橋シテンション》と云ふのがある。雨の夜に新橋停車場(現汐留復元驛舎)前の雑踏を描いたもので、敢へて鐵道ではなく、其処に集まる人々や人力車を描いてゐる。この繪が手に入らないものかと思つてゐたら、1988(昭和63)年に清親研究會から出された『小林清親名作集 第二集』を巧い具合に落手。オリヂナルは1881(明治14)年、すき燒 今朝の創業翌年であつた。

 繪では駅舎のその直ぐ右手に今朝は在る筈だが、勿論暗くて見えない。早速、この一枚だけを額装した。忠實な複製木版畫故、直射日光の當たる所や燈火の明るい所を避けて、會計横の柱に飾つた。案外と暗い繪なので、氣附かないかも知れないが、創業當時の新橋界隈を傳へる貴重な繪である。

Stenshon

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2011年7月22日 (金)

新蓄音機の會

Hibiya194 明日愈(イヨイヨ)、日比谷公会堂アーカイブ・カフェで「新蓄音機の會」を開く。公園事務所や建物の事務所に挟まれてゐる爲、作業員の出入りがひっきりなしなので、どのやうな會になるかやや不安ではある。表面を磨いたり、幾度か鳴らしたところ、自分の愛機程鳴り響かないものの、十分ホール全體に届く。天井の高さがものを云ふのだ。兎に角、樂しみ。

 特に申込は必要ないので、お暇な方は是非覗いてください。但しの曲の途中での入場はお斷はりすることがございいます。

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2011年7月21日 (木)

海老フリヤア

Yoshida 山中湖まで行くと必ず一回は富士吉田の「十駕」へ行くことになつた。あの海老フリャアが食べたくなるのだ。お任せ3,000圓の定食には、築地から取り寄せた海の幸が並ぶ。食べきれる量に調整してくれたので、殘さずに頂けるやうになつた。盆地の山中湖と違ひ、富士吉田は何処からでも富士山がよく見える。

Juga1Juga2Juga3 前菜、刺身、白身魚の蓼酢味噌燒き、澤蟹の唐揚げ等、丸ごとトマトの出汁煮、海老フリャア、蕎麦、プリンと滿腹だ。


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2011年7月20日 (水)

パンク

 連休中、涼しい山中湖で過ごし、桃を買つて歸へらうと馴染みの魚屋へ立ち寄るとまだ届いてゐないと云ふ。仕方なく、御殿場へ出て高速に乘る寸前に露天を發見。ところが、大きいものの色附きはよくないのに値段は倍なので買はなかつた。さて、出發と云ふ時に農家のおじさんが窓硝子を叩く。買はねえのかと怒られるかとたじろいだが、左の前輪がへこんでるから見て貰った方がいいよと親切に教へてくれたのだつた。

Pank そのままガソリンスタンドへ行くと、螺子(ネジ)が刺さつてパンクしてゐた。もしも、おじさんが聲を掛けてくれなければ、高速で破裂して大惨事の可能性もあつた。ありがたうおじさん。でも、桃を買はずにごめんなさい。

 うちの車は18吋のでかいものでスタンドには在庫がなく、隣の大井松田のタイヤ屋へ取りに行つて貰ひ、待つてゐる間に洗車と硝子コーティングをして貰ひ、綺麗になつて歸へつて來たのは深夜であつた。

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2011年7月19日 (火)

ベル

 蹴球の撫子(ナデシコ)日本の世界選手権大會優勝おめでたう。素晴らしい試合。物語には書けないやうな澤選手の一蹴りの決勝點(ゴール)。大いに勇氣を貰つた。それに引き替へ、MotoGPの日本人選手は怪我や轉倒に泣かされ、下位に沈んでしまつて活躍の場がなく殘念。激しい一位爭ひもホンダとヤマハの戰ひでもあり、そんな中放射能の危險には曝されたくないと、10月の日本GPを棄権すると云ふ選手も出て來て、どうなることやら不穏な空氣が拭ひ去れない。そして、牛肉からの内部被爆…。一日も早い放射能拡散防止処理をして貰ひたい。

Bell さて、先日師匠からのお聲掛かりで、京都造形芸術大學の通信教育學科「博物館學藝員」課程の先輩として、お手傳に。この日は「博物館學Ⅱの1」の對面授業(スクーリング)。それぞれ課題で書き上げた夢の企劃を班毎に1つに絞つて纏め、皆の前で發表すると云ふもの。

 ここでは各々の得意分野を活かして分擔し、協力態勢(チームワーク)を築くのが大事である。初めて會つて自己紹介と自分の展示企劃を如何にわかり易く言葉で傳へ、共感を得て、その情熱を形にできるかが鍵となる。前日は持ち時間10分としたら、どの班も時間内にきっちり終はつたが、この日は班數も多いので持ち時間7分とし、5分で1ベル、6分で2ベル、7分で強制終了となつた。自分はそのベル係を仰せ附かり、携帯型測時機(ストップウオッチ)で時間計測。

 企劃内容は素晴らしいにも拘はらず、一寸した手違ひから畫像を見せることができなかつたり、何か今ひとつ熱意が感じられなかつたりして、惨敗することもある。或ひは繪畫や彫刻と云つた王道ではなく、デニム、河童や木の子と云ふ全く違ふ分野のものを、きちんとした學術研究を基に發表したところもあつて實に愉快。2年前、自分は「蓄音機」を選び、見事1位を獲得したが、今年の受講生もなかなかのものであつた。


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2011年7月15日 (金)

修復

W1W2 震災で被災した羽目板窓硝子を交換。ずっと被災地に優先的に品物が回り、東京へは來なかつたのだ。筋入りなので割れて人に怪我をさせることはなかつたが、また來たらと思ふと他の箇所が心配だ。壁の亀裂も修復し、ほぼ元通り。後はトイレのタイル壁。こちらは罅の入つた周りも浮いてゐるらしく、音が違ふ。さうなると全面取り替へか。本來なら便器も外して配管もいっぺんにやりたいところだが、他の階の貸事務所を優先する爲、なかなかこちらの番が回つて來ない。いつまでもほってはおけないないので、頭の痛いところ。


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2011年7月14日 (木)

夏向け

Futai1 展示途中で風袋を取り附けて完成した、三段大和表具の「香魚(鮎)」。ヤフオクで安價で落札したボロボロの掛軸から、絹本本紙を抜き取り、最初の裏打ちだけは根本彰德堂にお願ひして、自分で裂(キレ)を選び、作業すること半年、やっとできたのだ。緞子の中より天と地の正絹裂の色が濃いのは玄人好みな色合ひらしい。この夏らしい作品なら、店の床の間に飾れる。

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2011年7月13日 (水)

スポレッタ

 深水黎一郎の『ジークフリートの剣』の續編とも云ふべき、『トスカの接吻』 講談社NOVELS を讀んだ。この作者はほんたうに歌劇が好きなのであらう、随所の現れる現代の演出家の名前や批評も的を射てゐる。

 前回の主役、ヘルデンテノールの藤枝和行がカヴァラドッシの役で歌ふ、プッチーニの歌劇《トスカ》第二幕の舞臺上で、スカルピアがトスカに刺されて死ぬ場面でほんたうに殺人事件が起きてしまふ。そこに、前作で見事に事件を解決した瞬一郎が伯父の海埜刑事を助けて謎解きを始めるのだ。併し、この瞬一郎こそが、實は他の作品でも事件を解決してをり、こちらがシリーズの主役であつたと今頃氣附いた。

 《トスカ》の主役は惡役の権化、羅馬(ローマ)市警視総監スカルピアなのだが、彼は歌姫トスカを手に入れさへすれば、後はどうでもよく、ほんたうは空砲で射殺の真似をして通行証を與へてゐたのではないか。日頃から無理難題を押し附けられて來た部下のスポレッタが實は黒幕で、實彈とすり替へたのではないか。大膽な解釈を披露してゐる。これには説得力があり、かう云ふ舞臺を誰かやつてくれないものか、期待したい。オペラファン必讀の書。


トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)Bookトスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)


著者:深水 黎一郎

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2011年7月12日 (火)

ピタピタ理論

Pitapita3 ドイツワインケナークラブで渡邉正澄先生をお招きして、ピタピタ理論セミナーが開かれた。

 渡邉先生の提唱する料理とワインがピタリピタリと合ふ「ピタピタ理論」を大雑把に述べれば、食べ物の状態は刻々と變化するが、林檎酸のやうな酸主體のワインは冷やして、乳酸のやうな酸主體のワインは室温で、その中間のワインと、それぞれ飲用適温があり、それに合ふ料理もさっぱりした料理には冷旨酸系ワインを、脂分の多いしつこい料理には温旨酸系ワインを、その中間には料理には間のワインを合はせればよいと云ふ。

 そして、後半には實驗である。實際に試食と試飲をして相性判斷をするのだ。例へば、茹でた水蛸の刺身とピースポーター・ミヘルスベルク・リースリングQbA(やや甘口)を合はせる際、冷やして飲むと美味しい冷旨酸系ワイン故、單に鹽だけよりも、檸檬汁の酸味、大葉のさっぱり感、それにほんの僅かな砂糖を加へるとピタッと合つた。要はワインに合ふやうに、微妙に調味料を足して調整するのがよいのだ。

 そして、牛肉のすき燒風には醤油と砂糖を加へると、ドルンフェルダーQbAのやや甘口にドンピシャリと合つた。實際にはお客さんに出す前に裏方でソースを調整すれば、そのワインとピタピタと合ふと云ふ。サワークリームや檸檬汁を足すと先程のモーゼルのやや甘口ワインにもきちんと適應するから不思議。單純に割り切れる筈がないと反對する人も居るらしいが、實際に試してみたことがないのだらう。とても參考になつた。


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2011年7月11日 (月)

土藏

Biwa0 淺草の土藏を備へたギャラリー・エフ鶴心さんの小實演(ミニライブ)「花一看」があつた。今回は鎮魂(レクイエム)を主題として《本能寺》が彈じられた。震災後、義援金や復舊復興と生者にばかり目をやつてゐるが、薩摩琵琶奏者として死者にも目を向け、弔ひの意味を込めて演奏したいと云ふ。

 師匠鶴田錦史による《本能寺》は戰後の作品であり、今我々の耳にする古典藝能は新しい奏法技術が活かされてゐるので、明治の頃とは違ふ。本來なら本能寺は幾度も火事に遭ひ、火を避ける爲、能の字の右側はヒ2つではなく、去を使ふと云ふのだ。

 また、この曲は派手な描冩がなく、淡々と語らねばならず、想像力に委ねられる難しい作品故、滅多に演奏されないらしい。師匠生誕100年の節目でもあり、震災鎮魂を兼ねて、今回は敢へて演奏すると意氣込みを語る鶴心さん。

 そこで今回は細かい解説も交へて、悲劇にも拘はらず明るい音調で始まり、大江山の鬼退治に擬へて主君の退治へ、淺瀬の桂川も恨み深い光秀の軍勢が本能寺に近附くと、信長は夢の中で人馬のもの音を聞き、火を放たれた館が紅蓮の炎で燃えさかる樣など、奏法を實演した後に、通して聽いた。日本人には勸善懲惡は似合はないのではないか、死者への鎮魂があり、生者の悲しみも語られる。

 暗い藏の中で演じられただけ、鼻先ぶつかるやうな距離感、演奏中の一體感は見事であつた。

Biwa 

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2011年7月 8日 (金)

紙箱

Box_2 舊盤を最新デジタル技術で再編輯(リマスター)したと聞くと、つひ触手が動く。この21枚組箱入りCDはフルトヴェングラーがEMIに録音したほぼ網羅してをり、以前のCDと聞き比べたくなつた。これはもともと、日本からの要請でSACDを作る際の二次的な産物なのだが、それでも格安で好い音が手に入るとなると嬉しい。然も、この中には《トリスタンとイゾルデ》全曲も入つてるのだ。

 でも、手の間から抜けるやうにワーグナー管絃樂曲が入つてゐないので、こちらはSACDとCDの複合(ハイブリット)盤を買ふことにした。78回轉盤で持つてゐても、聽き流すやうにはできないし、細かい資料も兼ねて、やはり最新版のCDは蒐集家には必要となる。然も、新たに金屬源盤や今まで死藏してゐた録音から初めて商品化されたベートーヴェンの交響曲第7番まである。

Wilhelm Furtwangler: THE GREAT EMI RCORDINGSMusicWilhelm Furtwangler: THE GREAT EMI RCORDINGS

販売元:EMI Classics
発売日:2011/01/17
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 そのCD製作に就いて、製作者自ら語つてゐるのも珍しい。
  製作者談話1
  製作者談話2
  製作者談話3

 何でもフルヴェンものに飛び附く譯ではないが、録音から61年目にして初めて商品化されたと云ふ策にはまりまんまと、この7番は買つてしまつた。よく見たら箱入りの中にも同じ曲はあつたが、こちらは複合盤なので、將來SACDプレイヤーを買ふかも知れないと、一寸無理な理屈を既に考へ出してゐた。それに、まだ、露西亞に戰時中の《トリスタン》全曲原盤が眠つてゐるらしい。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番Musicベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第7番

アーティスト:フルトヴェングラー(ヴィルヘルム)
販売元:EMIミュージックジャパン
発売日:2011/01/19
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2011年7月 7日 (木)

冩樂の正體

 明石散人 『東洲斎写楽はもういない』 講談社 を讀む。既に1990年に單行本として出版されてゐたものを、その後の文庫版を底本にして圖表を加へて昨年末に新たに出版された、冩樂とは誰かの謎解き本である。これこそ、決定版と云ふべき内容なので、ネタバレしないやうに細かいことは此処では書かない。

 文献から探るのではなく、史料から探すのだ。だから、必ず原本に當たる。なければ、最も古い記述を探し出す。さうすると、1922年に出されたユリウス・クルトの獨逸語による研究本『SHARAKU』が至極真ッ當であつたと氣附くのだ。史料の細かい差違を擧げ、順番に並べ、何が正しいのか判斷するところが非常に説得力がある。Y氏から授けられる知識を主人公の私が考察して行く。

 十返舎一九の記述、「とうじゅうさい」と讀む筈だと云ふ發見、能樂師、齋籐十郎兵衛との関はりなど、自分には新しい事實ばかりであつた。浮世繪好きなら一讀をお勸めする。

東洲斎写楽はもういないBook東洲斎写楽はもういない

著者:明石 散人
販売元:講談社
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2011年7月 6日 (水)

ラフマニノフ

 中山七里の『さよならドビュッシー』の續編とも云ふべき『おやすみラフマニノフ』を讀む。五萬とゐる音大卒業生が全て專門家(プロ)となれる譯ではない。その將來の可能性に賭けるオーディションとも云ふべ發表會のために、オーケストラの練習に励む學生たち。焦りや不安を捉へ、密室のストラディバリウス製のチェロ盗難から事件が始まる。

 今回はラフマニノフの洋琴(ピアノ)協奏曲第二番が主題となり、前回同様岬先生が洋琴奏者として、指揮者として華やかに活躍する中で、鮮やかな推理を披露してくれる。最後のどんでん返しは察知できるが、それでも靜かに見守りたるなる感じ。

 チャイコフスキイの提琴(ヴァイオリン)協奏曲の實況も、よく譜面を知り、樂器を知らなければ書けないだらう。クラシック好きで曲を知つてゐるならば、行間に音樂が溢れ、メロディが頭の中で鳴るので面白い。

おやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)Bookおやすみラフマニノフ (『このミス』大賞シリーズ)

著者:中山 七里
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2011年7月 5日 (火)

スピーカー

Sp1Sp2 近頃、面白いものを手に入れた。コムパクトディスクの音を増幅器(アムプ)に繋ぎ、そこからこの装置で空氣を震動(スピーカー)させて、蓄音器のホーンから音を出すのだ。平たく云へばCDの音を蓄音器で聽くことになる。
 フルトヴェングラーのモノラル録音はそのまま、雑音もなく、ややこぢんまりとして聽こえるだけでなく、音量調節ができるのだ。どんなに細いエキストラ・ソフトの鐵針でも文句を言はれるが、これだと五月蠅いとは言はれないので助かる。

 子供にしてみれば、クラシックなんざあ耳にしたくない譯で、早速、倖田來未を掛けてみた。すると、どうだらう。何を歌つてゐるのかよく聽き取れて、餘計な飾りが削ぎ落とされた、真ん中の聲だけが真ッ直ぐに届く。何だか昭和歌謡のやうだ。今度は嵐を掛けてみる。すると、味氣ない、貧弱な樂曲となり、途中の櫻井翔の語りは誰だか判らなくなつてしまつた。また、Bzだとこれも本來の装飾音がごっそり抜けて、藤山一郎風な稲葉浩志となる。西野カナだと、昭和の歌姫のやうで優しい聲が響く。實に樂しい。
 たまにかうして聽くのもレコードも削らないし、一考の餘地がある。

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2011年7月 4日 (月)

外傳

 舞臺《銀河英雄傳説》外傳、ミッタマイヤー・ロイエンタール編を觀た。抽選漏れして、半ば諦めてゐたが、追加公演でやっと手に入ったのだ。

 後に、銀河帝国の皇帝ラインハルトの下、帝国の双璧と称される「疾風ヴォルフ」と畏れられたウォルフガング・ミッターマイヤーと、左右瞳の色が異なるオスカー・フォン・ロイエンタールの出會ひと活躍を描いたもの。 同時期にイゼルローン要塞に配屬され、共に事件に巻き込まれるのだが…。

 主役のミッターマイヤー役の中河内雅貴、ロイエンタール役の東山義久は俊敏にして優雅に踊り、科白廻しも聞き易く、さすがであつた。脇役陣もアニメ版の雰圍氣をよく傳へてをり、好演。どうしても舞臺版として縮める爲、省略も多いが前回よりも纏まりがあつた。かう云ふ舞臺に出て來る若い俳優をテレビ以外で知る機會が殆どないので、全然知らなかつたが、結構皆さんあちこちで活躍してゐた。

 但し、イゼルローン要塞に就いての説明が臺詞だけでは、どれだけの人に防御壁が流體金屬層だと理解されたのかは不明。次回は義眼の策士オーベルシュタイン編。切符先行販賣で抽選漏れしないだらうか。また、相手陣營の自由惑星同盟まで行き着くにはどれほど時間が掛かるのか。壮大な宇宙歌劇(スペースオペラ)の舞臺の完結は何年後なのであらうか。益々先が氣になる。

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2011年7月 1日 (金)

ヘルデンテノール

 ワーグナーの樂劇に登城するやうな英雄(Helden)役を歌ひこなすテノールを「ヘルデンテノール(Heldentenor)」と稱するが、この度ワーグナーの聖地、バイロイト音樂祭に日本人で初めてジークフリート役に藤枝和行が抜擢された。『のだめカンタービレ』の千秋のやうにオレ樣の爲に世界はある位の不遜な男が、婚約者と共に占い師の元を訪ねる所から始まる小説だ。

 深水 黎一郎 『ジークフリートの劍』 講談社 はワーグナー好きには堪らないだらう。樂劇《ニーベルングの指環》の演出に關する蘊蓄、バイロイトの街やバイロイト音樂祭の裏側等、よく描けてゐる。和行の婚約者、有希子は占い師の老婆の豫言通り、列車事故で亡くなつてしまひ、一緒に舞臺に乘ることを夢見た故人の遺志を尊重して、遺骨を抱いて歌はうと決意する。パーティーに現れた謎の日本人女性、ソプラノ歌手の誘惑、路上演奏者の日本人の若者等との出會ひ、恐れを抱かぬジークフリートのやうに怖いものなしの和行が愈本番を迎へる。

 オペラを知らない人にはミステリとして、《指環》の解説じみたメールでの遣り取りに不滿が殘るかも知れないが、帶にある通り、最高の「藝術ミステリ」に變はりはないだらう。是非、一讀をお勸めする。

ジークフリートの剣Bookジークフリートの剣

著者:深水 黎一郎
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