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2011年7月13日 (水)

スポレッタ

 深水黎一郎の『ジークフリートの剣』の續編とも云ふべき、『トスカの接吻』 講談社NOVELS を讀んだ。この作者はほんたうに歌劇が好きなのであらう、随所の現れる現代の演出家の名前や批評も的を射てゐる。

 前回の主役、ヘルデンテノールの藤枝和行がカヴァラドッシの役で歌ふ、プッチーニの歌劇《トスカ》第二幕の舞臺上で、スカルピアがトスカに刺されて死ぬ場面でほんたうに殺人事件が起きてしまふ。そこに、前作で見事に事件を解決した瞬一郎が伯父の海埜刑事を助けて謎解きを始めるのだ。併し、この瞬一郎こそが、實は他の作品でも事件を解決してをり、こちらがシリーズの主役であつたと今頃氣附いた。

 《トスカ》の主役は惡役の権化、羅馬(ローマ)市警視総監スカルピアなのだが、彼は歌姫トスカを手に入れさへすれば、後はどうでもよく、ほんたうは空砲で射殺の真似をして通行証を與へてゐたのではないか。日頃から無理難題を押し附けられて來た部下のスポレッタが實は黒幕で、實彈とすり替へたのではないか。大膽な解釈を披露してゐる。これには説得力があり、かう云ふ舞臺を誰かやつてくれないものか、期待したい。オペラファン必讀の書。


トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)Bookトスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)


著者:深水 黎一郎

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コメント

私も読んで感心しました。すごい作家が出てきたなと思います。

投稿: イイダ | 2011年7月14日 (木) 03時20分

きちんと劇場通ってる作家が出て來て嬉しいですね。>イイダさん

投稿: gramophon | 2011年7月14日 (木) 11時19分

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