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2011年7月 1日 (金)

ヘルデンテノール

 ワーグナーの樂劇に登城するやうな英雄(Helden)役を歌ひこなすテノールを「ヘルデンテノール(Heldentenor)」と稱するが、この度ワーグナーの聖地、バイロイト音樂祭に日本人で初めてジークフリート役に藤枝和行が抜擢された。『のだめカンタービレ』の千秋のやうにオレ樣の爲に世界はある位の不遜な男が、婚約者と共に占い師の元を訪ねる所から始まる小説だ。

 深水 黎一郎 『ジークフリートの劍』 講談社 はワーグナー好きには堪らないだらう。樂劇《ニーベルングの指環》の演出に關する蘊蓄、バイロイトの街やバイロイト音樂祭の裏側等、よく描けてゐる。和行の婚約者、有希子は占い師の老婆の豫言通り、列車事故で亡くなつてしまひ、一緒に舞臺に乘ることを夢見た故人の遺志を尊重して、遺骨を抱いて歌はうと決意する。パーティーに現れた謎の日本人女性、ソプラノ歌手の誘惑、路上演奏者の日本人の若者等との出會ひ、恐れを抱かぬジークフリートのやうに怖いものなしの和行が愈本番を迎へる。

 オペラを知らない人にはミステリとして、《指環》の解説じみたメールでの遣り取りに不滿が殘るかも知れないが、帶にある通り、最高の「藝術ミステリ」に變はりはないだらう。是非、一讀をお勸めする。

ジークフリートの剣Bookジークフリートの剣

著者:深水 黎一郎
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