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2011年9月22日 (木)

松屋銀座

 たまたま松屋銀座に半襦袢を買ひに昇降機で七階に辿り着いたら、真ッ先に眼に入つた「遊びギャラリー」に足が向いてしまつた。「橋 寛憲 針金造形作品展」。よく觀光地に針金で名前を作るヒッピーが昔はゐたものだが、それを上品にアートに極めた感じ。大きな作品は西表山猫にもなるが、金魚、蛙、蜥蜴、甲蟲、蝉のやうな生き物が立體的に作られてゐる。身體は波場にした針金の山の部分を巧く接續して自分の脚で立つてゐるのだから素晴らしい。安ぽい針金ではないのであらう、輝きが違ふ。見てゐるだけでふと微笑みが零れる。何氣に飾つてもいいのだらうなあ。

 そして、その隣の美術畫廊では丁度「イレブンガールズ アートコレクション」をやつてゐた。アートの新しい風 11人の女子が彩る美術展と副題が附いてゐる通り、1980年代生まれの若手の女流作家11人の展示會。洋畫、日本畫、水彩畫、銅版畫、木版畫、陶造形など色々。作家本人もゐるのでまた樂し。もう判らないことは本人に尋ねるのが一番だと云う癖が附いてしまつた。

 一所懸命説明してくれるし、直接疑問點をぶつけられるのがいい。川瀬巴水の影響かなと木版畫の百瀬晴海さんに問へば、矢張り好きだと云ふ。彼女は葉書大に鳥や動物を描いてゐたが、もう少し色を重ねてしっかりと着色した方がかすれた今の感じよりもいい氣がした。

 また、アクリル畫で軸装してある動物繪の瀬下梓さんの表装が實に殘念。何処で表装したのかと訊いたら、軸になつてゐるものを買ひ、真ん中の本紙の後から描いた作品だと云ふ、それで合點が行つた。天地の裂が如何にも出來合の個性がないもので、本紙の周りの裂も今一つ、一文字にしてもぱっとしないし、黒い軸先が全體の雰圍氣を臺無しにしてゐるのだ。ご本人は軸の柄の色に合はせて、色合ひを決めたと云ふが本末轉倒だらう。これは素直に傳へた。然も、化學糊なのだらう、機械表装だと長い間に色變はりするので、きちんと小麦澱粉の生麩糊(シヤウフノリ)でないと勿體ないとも。

 軸装すると高くはなるかも知れないが、こんなところで妥協していけないと勝手な意見も重ねて述べた。繪が引き立たないのが、とても殘念。作品を生かせるやうに、もっと眼を養つて欲しいとも。犬の背景の植物がアール・ヌーヴォーぽいので尋ねると、大正時代の繪も好きだと云ふ。まだ、かうして伸び白がある分、行く末が樂しみでもある。

 総じて云へるのは、氣迫に欠ける。好きで描いてゐるのは傳はるが、それ以上の息をのむやうな個性や壓倒的な力を感じないのだ。作品に命を賭けた先人たちとは違ひ、これから畫業にして行くにしては、ゆるい平成の作品なのだらうな。十年後にまた彼女たちの作品が觀たい。

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