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2011年12月10日 (土)

水の精

 新國で珍しいドヴォルザークの歌劇《ルサルカ》を觀た。物語は人魚姫傳説の水の精版で、人間に憧れた水の精ルサルカが魔女の力を借りて人となるが思ひを遂げて結婚するまで口が利けない爲、移り氣な王子に捨てられ、湖に戻つても仲間には受け入れられず、さりとて人間界にも居られず、苦惱と絶望が續く中、改心した王子がルサルカの元に戻り息を引き取ると云ふもの。

 2009年に諾威(ノルウェー)國立歌劇場で新制作されたものを先方の藝術監督ポール・カランとの連携で初臺に持つて來たもの。水を表す青を基調として、湖の底、水邊の畔、森の中、城の中と波紋が現れては消え、幻想的な世界を描き出してゐた。捷克(チェコ)の歌劇を英語圏の人々が諾威で舞臺にし日本に移送したのが成功した。

 ルサルカのアリア〈月に寄せる歌〉しか知らなかつたが、流れる旋律はどれも美しく、素直にメルヘンの世界に入れるだけでなく、万人向けの演出もわかりやすい。序曲は繪本を讀み聞かせ乍ら寝てしまつた父親の横で、月を見乍ら夢見る少女が鏡の中に入り込み、湖の底へ連れられて、そのまま自分がルサルカとなつてしまふ。然も、この家は第一幕が始まる前に奈落の底に沈み、奥から舞臺が迫り出すと云ふ舞臺装置を完璧に使ひこなしてゐた。勿論、終幕、王子が死んだ後、ルサルカに成り切つてゐた少女はまた、自分の屋根裏部屋の寝臺に戻り、月を眺めると云ふ序曲と同じ場面で終はる。

 過不足ない歌手陣、ヤロスラフ・キズリンク指揮する東フィルも本領を發揮して何処までも浪漫的によどみのない音樂を奏で、ルサルカ役のオルガ・グリャコヴァは華麗な水の精を演じ、ビルギット・レンメルトは威嚴のある恐ろしい魔女イェジババを、ペーター・ベルガーは相手の心が讀めないとすぐに浮氣したがる輕い王子を、ミッシャ・シェロミアンスキーは慈愛に滿ちた水の精の父を、ブリギッテ・ピンターは王子を手玉に取るファム・ファタルな外國の公女を捷克語で歌ひ切り、非常に完成度の高い舞臺となつた。これなら子供連れでも來れたと口惜しい。

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