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2012年2月10日 (金)

鶴田錦史

9784093882156 好意にさせて頂いてゐる薩摩琵琶奏者、友吉鶴心さんの師匠に當たる鶴田錦史の傳記が出た。武滿 徹作曲の《ノヴェムバー・ステップス》の初演者としても知られて、文樂の太棹三味線の野澤錦糸さんと音が同じなので、氣になつてはゐたが、鶴心さんから發せられる思ひ出や教へ以外に、深く知る由もなかつた。

 然も、10代半ばから40代半ばに就いて、自ら語ることはせず、男装で通した女性であり、實業家として成功してゐた爲、美しいもの、綺麗なものだけを身に附けてゐたと聞いて、尚更興味が湧いた。

 練習嫌ひであつたが、天賦の美聲を武器に早くから頭角を現し、10代で既に弟子を取り、無聲映畫の伴奏や高座や興行で家族を養つてゐた菊枝(錦史)。併しライバルの出現に、その後は結婚、出産、離婚、琵琶とは離れて水商賣で稼いだものの戰爭で失ひ、戰後、母の生まれた別府に移り住んでGI相手の事業を廣げ、大分にダンスホールを開き、東京にキャバレーを始め、時代と共にナイトクラブに鞍替へし、ライバル水藤錦嬢の弟子、鶴田櫻玉の時代は語られることなく、女を捨てて男装し、錦史として演奏を再開させた。

 波瀾万丈を繪に描いたやうな人生だが、我々に殘してくれた現代に通用する薩摩琵琶の功績は大きい。現にお弟子さんたちが大勢活躍してゐると思ふと、偉いことだ。

 


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