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2012年2月 9日 (木)

身代はり

 文樂公演、第三部を聽く。《菅原傳授手習鑑》から〈寺入りの段〉と〈寺子屋の段〉、そして《日本振袖始》。寺子屋は2度目だが、人形の入らない素淨瑠璃や歌舞伎でも親しんでゐるので、粗筋は知つてをり、語りや三味線の冴へ、それに人形の細かい情をたっぷりと鑑賞できた。

 菅原道真こと菅丞相が流された後、息子、菅秀才を預かる武部源藏のところに、敵方の藤原時平に仕へる松王丸が菅秀才の首を所望してやって來る、ここ一番とも云へる謂はば山場。松王丸は自分の子供を身代はりにし、昔薫陶を受けた菅丞相の恩に報いると云ふ話。最初は敵だと思つてゐた松王丸が、實は味方で然も、息子を差し出してゐたと云ふところが憐れ。家族よりも忠義を取ると云ふことは今だとあり得ないが、子供まで差し出し、差し出される子供も納得の上と云ふ不条理。何度見ても色々考へさせられる。

 久し振りに元氣な姿で人形を操る文雀、今も冴へ渡る寛治の三味線など、聽きどころ滿載。寺子屋の前は津駒大夫と寛治、切り場を嶋大夫と富助が演じ、大いに盛り上げてくれた。二人の大夫ともベタな語りだが、それぞれの持ち味の生きたいい舞臺であつた。
 玉女の松王丸はやや動きが堅いが、威嚴のある役らしく、大きく演じられ、その女房、千代の文雀の情の隠つた藝の深さに感じ入り、いつも女形の和生の源藏も武士の心が通じる。
 
 後半は素戔嗚尊が八岐大蛇を退治する話で、題名は生け贄にされた稲田姫が振り袖の中に蠅斬(ハバキリ)の名劍を偲ばれたことに由來する。呂勢大夫、咲甫大夫と若手の美聲が響き、清治率いる三味線軍團の激しい合奏や鼓や鐘などの鳴り物も派手な上、勘十郎の岩長姫の立ち回りも素晴らしく、しんみりとした寺子屋の後だけに、すっきり爽快に終はつた。

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