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2012年8月30日 (木)

人造人間

 セミナー、演奏旅行、同窓会の準備で畫廊巡りができな日々が續くが、本を讀むのは相變はらず。夏と云へばホラーなので、今月中は集中的に讀んだが、分野の違ふこの本が一番印象に殘つた。伊藤計畫 『虐殺器官』 ハヤカワ文庫 は最近讀んだ中では壓巻であつた。

 邊境地域での内戰や大規模虐殺の裏に、常に謎の男ジョン・ポールの存在を突き止めた特殊部隊の兵士、シェパード大尉が彼を追ふのだが、一筋縄で行かない。殆ど人造人間のやうな殺人兵器と化してゐるものの、人殺しの意味や殺人に就いて、段々と惱やむ姿は、植物人間となつた母親の死を決めたことへの躊躇ひから惡夢を見るなど繊細な人格が滲み出る。戀はしない筈であつたのに、ポールの彼女に惹かれて、思はぬ展開を見せる。

 息も附かせぬハードボイルドと違ひ、淡々と内面で自問を繰り返し乍ら、命令を遂行する主人公。殺人に疑問をもつては任務が上手くいかないと知つて、考へない筈であつたのに…。

 亡き伊藤渾身の作。お勸めする。

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