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2012年9月28日 (金)

文樂東京公演

 九月の文樂東京公演は橋下市長による壓力から倒れられた住大夫師匠が居ないばかりか、清治さんもをらず、途中で源大夫も休場して、何とも寂しい公演となつた。

 物語は歌舞伎の「鳴神」とほぼ同じだが、こちらは『太平記』の説話を謡曲にした「一角仙人」を題材とし、『今昔尾野語』の久米仙人に置き換えた《粂仙人吉野花王》。弟聖徳太子が政務を司ることを良しとしない兄、粂仙人は三種の神器を盗み出し、龍神を滝壺に閉じ込めて干魃をもたらしてゐるところに、密命を受けた花ますが色仕掛けで惑はし、行法が解かれて龍神は空に上り雨が降り出し、怒り心頭の荒れ狂ふ仙人が後を追ふ。
 破戒して墜落して行く樣が變化に富んで樂しい。

 第一部後半は《夏祭浪花鑑》。魚賣りによる殺人事件と大阪の高津宮夏祭を背景とした任侠もの。〈釣船三婦内の段〉が頂點となるが、文字久大夫が急遽住大夫の代はりを勤めたため、抑揚がなく、演じ分けがはっきりせず、獨逸の疲れが出たのか寝入つてしまひ、殆ど記憶がない。
 自分的には〈長町裏の段〉の義父義平次を團七が揉み合ひの末、殺めてしまふ場面の方が印象的。海老藏よりも迫真の演技の人形の方が感情移入できた。この日は源大夫がまだ頑張つてゐた。

 そして、第二部前半は《傾城阿波の鳴門》。お家騒動の末、紛失した家寶の刀を探す爲に盗賊一味に加はつた阿波十郎兵衛。偶然やつて來た巡礼の子が自分の子だと氣附いた妻お弓は災難が降り掛かるよりは母だと名乘ることもできず、路銀を渡して去らせるものの、十郎兵衛が誤つて殺してしまひ、悲嘆に暮れ乍らも追手からの逃れるのでした。
 運命の惡戯か悲劇に悲劇が重なり、自分の子を殺してしまふなんて云ふ泥臭い話はとても遣り切れない。文雀のお弓が涙を誘った。

 そしてトリは《冥土の飛脚》。〈封印切の段〉は歌舞伎でもお馴染みだが、自分は文樂が先であつた。飛脚爲替の亀屋の主人、忠兵衛は持参金附の養子となつて早4年。もう二十歳となつたものの、傾城梅川と戀仲となり、會社の金に手を附け、女郎の前で罵られたと、短氣を起こして公金まで横領して逃げると云ふ話。
 嶋大夫はお疲れなのかだいぶ聲が枯れてゐたが、ベタな世話物を得意とするだけに、迫真に迫る聲色で惹き附け、寝る暇も餘へなかった。いつもは男役の勘十郎が梅川を、いつも女形の忠兵衛を和生が演じ、成る程、しっぽりとしたよい感じであつた。

〈道行相合駕籠〉では、霙(ミゾレ)混じりの寒空の下、薄(ススキ)のなびく音にさへ怯え、一目母親に會ひたいと實家目指して戀の逃避行。寂しい場面だからこそ、賑やかな伴奏が哀れ。

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