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2012年12月28日 (金)

ルソー

 年賀状を書き終へてゐないのに、讀書が止まらなかつた。本日で營業はお仕舞ひなので、休憩時間に書き上げねばなるまい。

 昨日、讀破したのは原田ハマ 『楽園のカンヴァス』 新潮社。美術ミステリーと云ふ分野があるか知らないが、鑑定を巡る極上小説であつた。

 アカデミズムから離れ、繪畫の近くに居られるからと、大原美術館の監視員をしてゐる織繪に、紐育のメトロ美術館キュレーターのティムからルソーの《夢》を日本に貸し出すには、オリエ・ハヤカワが企劃交渉に來ることと指定され、館長以下上役が驚いて、一介の監視員だと思はれてゐた織繪にお願ひすることから物語は始まる。

 二人の出會ひは、1983年にバーゼルの謎の蒐集家に鑑定を頼まれたことが發端だ。一週間、毎日一章づつ與へられた本を讀み、最終的にこのルソーの繪が本物か贋作が判定を下して欲しいと依頼される。然も、勝者にその繪の権利は譲られると云ふ。未だに評價の定まらないルソーの繪に隠された秘密、美術業界の裏の世界、手に汗握る展開にあっと云ふ間に讀み切つてしまつた。

 あちこちに散りば填められた挿話や、主人公の態度に愛情を感じるのだ。ほんたうに繪が好きな人だと解る。視線がとても温かい。學藝員の端くれとしては心温まる物語にほっとさせられた。

 唯一殘念なのは、バーゼルのレストランでご馳走になる時、ラインガウの年代ものワインを選んだことが疑問。蒐集家主人に長く仕へた獨逸系の辯護士のご馳走なのだから、バーデンのヴァイスブルグンダー、或ひはグラウブルグンダーを選ばせるべきであつた。そこで、ラインガウにすると云ふことは、普段から地元のワインを飲まず、銘柄だけに拘つた紳士氣取りの嫌な奴になる。あっ、さうか、そこまで狙って書いてゐたのかも知れない…。

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