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2013年1月31日 (木)

移動美術館

 アートソムリエの山本冬彦さんがお勸めしてゐた西野嘉章 『モバイルミュージアム行動する博物館』 平凡社新書を讀んだ。一過性の特別展では、蒐集品を増やしたり、保管維持管理さへも行き届かず、人件費も捻出できなくなりつつある。そこで、モバイルミュージアムとして移動博物館を造り、トラック一臺で運べるやうな展示を考へ、今まで行つた展示の殘りを使ひ提携先を順次巡り、繼續して行くことで新しい博物館のあり方を考へやうと云ふもの。東京大學総合研究博物館で行つた實例を示し、他館との提携で収支を安定させ、新しい事業モデルを提案してゐる。

 特別展には足繁く通ふ割に、常設展には足を運ばない一般消費者にこちら側に顔を向かせ、氣樂に來られる場を繼續的に作り出すのは並大抵ではないが、既に成功例もあるので21世紀の新しい博物館のあり方のひとつなのかも知れない。

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2013年1月30日 (水)

日本畫六人展

 十四代今泉今右衛門さんご自身に挨拶をした後、京橋のアートスペース羅針盤で「羅針盤セレクションVOL.1 日本畫6人展」を觀る。

 美大の學生から20代の作家を中心としたグループ展故、個性の違ひが樂しい。自分は楚里勇己(そりゆうき)さんの四季(藤、曼珠沙華、櫻、南天)をそれぞれ描いた縦長の作品が面白いと思った。それぞれパターン化した圖案ではあるが、同じ左向きの櫻の枝や南天はリズムがあって樂しく、金地に下の方にすっきりと群生する曼珠沙華が一番よい。上下二段に描かれた藤はしつこく、上段だけならもっとよかったと思った。

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2013年1月29日 (火)

襖繪

 キーヤンこと木村英輝の襖繪が日本橋高島屋の窓飾りに飾つてある。左翼に金地に白象、右翼に銀地に赤象、襖を開くと紫舟(シシユウ)さんの書。日本橋高島屋80周年記念と云ふことでの特別展示である。いつ見ても、この人の繪はわくわくして、元氣が出る。おどけた象の前には与謝野晶子の短歌もあり、80年のお祝ひとしては面白い試みだ。

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2013年1月28日 (月)

十四代

日本橋三越の「襲名10周年記念 十四代今泉今右衛門展」を觀る。初日には作家ご本人もゐらしたのでご挨拶。7~8年前に訪ねて以來、東京での個展は欠かさず伺ふやうにしてゐる。
 今回は明治維新となつて大名家からの注文も入らず、色鍋島が途絶えた頃の十一代から先代までの作品の一部と、それを基に單なる冩しではなく新たに十四代の墨彈きの技法を加へた新しい作品を紹介してゐた。現在まで續く技法、それに加へられた新しい技法が渾然一體となり、新たな美を生み出す。溜息が出るやうな素晴らしい作品ばかりだが、とても買へないのが口惜しい。

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2013年1月25日 (金)

街歩き

Hantei_chikuonki Beginnings主催、日本再發見プロジェクト「モノがたり」第6回は、湯嶋、根津界隈の街歩きから始まった。舊岩崎庭園から根津神社へ解説附きで歩き、最後の目的地、木造三階建ての串揚げ所「はん亭」に到着し、いつものやうに蓄音器演奏。今回は木造の建物に合はせて、提琴特輯とした。

 ELGER: Salut d'Amour
 エルガー: 愛の挨拶
 Isolde Menges (Vln.), Elleen Beattos (Pf.)
 HMV D1313 (CC10978-2) 1927年録音

 SARASATE: Zigeunerweisen
 サラサーテ: ツィゴイネルワイゼン
 Vasa Prihoda (Vln.), Otto A. Graf (Pf.)
 Deutsche Gramophon Gesellschaft 30016 (6331 GR, 6332 GR) 1935年録音

 DINUCU / HEIFETZ: Hora Staccato
 ディニク(ハイフェッツ編曲): ホラ・スタカート
 Ginette Neveu (Vln.), Jean Neveu (Pf.)
 La Voix de son Maitre DA1865 (OEA11167-1) 1948年8月12/14日録音

 京都の町屋に比べると、天井裏があり板の間に置いた所爲か、案外響いた。それでも、箪笥の上、棚の上、床に直接と色々試聽した結果、卓子の上がよいと判った。録音年代の違ひ、演奏者の違ひが少しは傳はつたと思ふ。30分と云ふ短い時間で、ポータブル蓄音器や針の話なども交へると三曲が精一杯。

 そして、今回は串揚げに日本のワインだけを合はずべく準備した甲斐もあり、きちんとワインの説明も添へてこちらの意圖も傳はり、和やかな會となつた。

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2013年1月24日 (木)

亞細亞の息吹

Nisii 銀座三越8階ギャラリーで、「亞細亞の息吹 ASIAN BREEZE」が開かれてゐた。知人からの案内で、土曜日の晝下がりでアートトークが聞けると知り、のこのこと出掛けた。
 新館が出來てから人出が倍になり、昇降機も随分と待される。然も、8階に上がると目の前ではなく、階段を少し上がった新館側であつた。決して廣過ぎない空間に適度な間合ひで展示されてゐるのは、さすがは三越だ。
 丁度、西井佑助さんが語り出すところであつた。ご本人の作品は右奥角の鐵椅子と本の置物と、冩眞左手前の半身木像にびっしり釘が刺さつた立像。ふと昔見た映畫「ヘルレイザー」が頭をかすめるが、そんなおどろおどろしいところはなくて、若々しさに溢れ、甲冑を身に纏ったやうにも見えて力強い。一本も丸太を動力鋸で荒削りにしてゐると云うが、その立體感が美しい。とても目を引いた。

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2013年1月23日 (水)

坊主

Bouze3Bouze1Bouze2 隠れた名店は在るものだ。友人の紹介で訪ねたこの店の名は「坊主」。ブラッセリーなので、「ル・ボーズ」と云ふ。銀座の雑居ビルの三階ともなると、表の看板だけでは中々這入るのに勇氣が要る。

 まだ、昨年開店したばかりで、晝食は2,500圓のみだが、前菜、主菜それぞれお三皿の中から選べる。自分が選んだのはオニオン・グランタンスープ、仔羊肉のハンバーグにクスクス添へ。それに、デザートと珈琲が附くし、日曜日だと通しで營業してゐるので、買物の後行くのも便利かも。
 こぢんまりと店の中で、傳統的な佛蘭西料理の技が活かされ、落ち着いて食べられるのが嬉しい。聞けば、夜は單品料理が多く、それをワインのおつまみにして飲むらしい。いい店を教へて貰つた。


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2013年1月22日 (火)

京都

 京都が戀しくなると、いつも『細雪』を讀んでゐたが、あれは船場のいとさんの話だから、渡辺淳一 『化粧』 講談社文庫を讀んだ。作家と交流のある重金敦之さんの『愚者の説法 賢者のぼやき』 左右社に名前が出て來て、厚い文庫本なので時間も掛かりさうだと期待して讀み始めたら、上下巻3日で讀み終えてしまつた。

 重金さんは週刊朝日の編輯長もされた大先輩で、庭球倶樂部が一緒で學生の頃お手合はせを願つた程度であつたが、食通であり、時折ワイン會で今もお會ひする。新刊本を進呈下さり、積んだままであつたのをやっと年明けにふんふん同意し乍ら讀んだ後、直ぐにこの本の中で京都へ出掛けたのでる。
 大谷崎を意識して櫻の季節の二年間を描いてゐるが、1980年頃の雰圍氣がそこはかとなく傳はると共に、三人姉妹に祇園のお母さんの女心をよく描き切つてゐるものだと感心した。それに、東夷には女性の京言葉に滅法弱いし、讀後の心地よい餘韻が樂しめる。今度上洛するのは何時だらう。

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2013年1月21日 (月)

受賞作家展

 銀座コリドー街の銀座アートホールで「大規模公募展である第86回國展 國畫會繪畫部 受賞作家展」を觀る。主に低い天井に届かんばかりの130號の大作から小品が並ぶ。確かにどれも力作であるが、何か心に訴へ掛けて來ない。各々技量を誇り、個性的なのも判るが、面白みに掛ける。

 新人賞を受賞した冨田真人の「無題」と云ふ小さめの額なし油繪だけ唯一目が止まる。ビルの谷間から日の出を描いたやうな作品が無造作に描かれてゐるが、昔乍らの掛軸の日之出圖を想起させて面白い。これだけは暫く飽きずに見てゐた。

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2013年1月18日 (金)

俊の科白

 この間、宮崎 駿企劃・脚本作品《コクリコ坂から》が地上波で放送された。或る程度の短縮も致し方ないし、途中で宣傳が入るのが氣に入らないが、初めて見るには凝縮されてゐるのでよい。横濱を舞臺に、東京五輪前の高校生の姿を描いてゐるが、懐かしいものが澤山出てゐた。製麺機のやうなローラーで挾むだけの脱水機の附いた洗濯機とか、タイル貼りの臺所流し、齒釜鍋…、自分が子供の頃は幾らでもその邊で見られた風景なのだ。その上、カルチェラタンと呼ばれる明治から在る古い建物の建て壊しに反對する集會で、主人公の俊が

 「古いものを壊すことは過去の記憶を捨てることと同じじゃないのか!?」
 「人が生きて死んでいった記憶をないがしろにするということじゃないのか!?」
 「新しいものばかりに飛びついて歴史を顧みない君たちに未来などあるか!!」

 何と素晴らしい科白なのであらう。此処だけで痺れてしまつた。

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2013年1月17日 (木)

獨逸男子會

 昨年9月に、學生オケを引率して南獨逸へ行つたが、その時の先發隊だけで新年會をやろうと聲を掛けたところ、本隊組の男子も來たいと云ふことで、獨逸男子會となつた。學生でも負擔の少ないやうに、澁谷のジンギスカン食べ放題のもんごろ~やで、一人3,500圓。

 此処の鍋は周りにお湯を張り、野菜を茹でられ、肉汁が其処に這入るので、〆のラーメンがまた美味い。ラーメンを此処で茹で、茹で汁を薄まったタレに入れ、胡麻だれを加へて味を調えて頂くのだ。家族でも時折來るのだが、肉ばかり選び、ご飯で腹を滿たす學生たちには好評であつた。中には初めて仔羊を食べたとか、ジンギスカン鍋自體初めてと云ふ子もゐた。薄切り仔羊肉を茹でて、鹽とカレー粉だけで頂くのも好きだ。

 彼等と演奏旅行へ行ったのは、ほんの4箇月前のことなのに、随分と昔に感じる。それだけ學生たちが成長してゐるからなのであらうか。新年會でなくても、また同じメンバーで飲みませうと誘はれたのが、嬉しい。同じ釜の飯を食った仲間の結束は強い。

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2013年1月16日 (水)

版畫

 昨年知り合つた版畫家、小林美佐子さんからご案内を頂いた三人展「新春展」を觀光に、版畫專門のシロタ畫廊へ。

草むらに佇む制服姿の女の子が淫靡な小林さんの作品は好き嫌ひがはっきりするだらう。女ばかりの我が家には決して飾れない。然も、はっきりと顔は描かず、薄くぼんやりしったところが怖い。夜中に抜け出て來るやうなおどろおどろしさがある。勿論、作家ご本人は至つて明るい女性なのだが、この落差が面白いのかも知れない。

 隣に並ぶ冨樫早智さんの作品は、とても漫畫風。何処か、つげ義春風であり、梅圖かずおの描く不条理な世界、高橋葉介のやうな猟奇要素の強い幻想怪奇の匂ひがぷんぷんする。

 そして、最も氣に入つたのは山田彩加さんの作品は、細かい線の連続が一瞬銅版畫(エッチング)かと思ひきや石版畫(リトグラフ)だと云ふ。非常に細かく、的確な線が綺麗。確かな技術に宿る力が見る者に訴えかけてくるのが素敵。大きな作品でも線を追ふだけでも樂しい。巴里留學時代の「ルーヴルの胸像」は石版畫らしさが加はり、線だけの作品より奧行きが出てゐる。まだ、大學院生だと云ふが、この完成度は將來が樂しみ。

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2013年1月15日 (火)

雪掻き

 昨日の東京は10時頃から雪が降り始め、夕方までに10糎以上も積もつた。昨年のうちにどでかいスコップ状の赤いプラスチック製の雪除けを買つてをいたので、効率がいい。生憎と年寄りと女子供ばかりで、男手一人故、頑張ッた。玄関前と駐車場前だけは何とか除去し、轍中央の凍った下地まで除去。それ迄に本三冊、CDを蓄音器に接續して大音響で聽き、時折犬を庭に放つだけであつた爲、大汗もかいて清々しかつた。途端に腹が減ったのは言ふ迄もない。家族からは感謝の言葉を貰ひ、夕飯はがっつり肉と相成つた。

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2013年1月11日 (金)

屋上庭園

 今年初の畫廊巡り。まづ、40名の作家の小品が並んだ「はじめ展」を觀に、銀座の屋上庭園、枝香庵へ。生憎と畫廊のオーナーは不在であつたが、個性豐かな作品が並び、巳年に合はせた蛇を描いたものや蛇の燒き物、富士山の繪など、新春らしい初々しさに溢れてゐた。

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2013年1月10日 (木)

タンプレ

 娘たちが盛んに「タンプレ」がどうのかうのと話してゐるのに、違和感を覺へた。何か單語プレイング・ゲームの省略形かと思つてゐたら、「誕生日プレゼント」のことであつた。若い人同士では通じる符牒は我々の頃も、親父の代も、ずっと前からあつた筈だが、單純に縮めただけの單語が理解できなかつた自分の愚かしさに年の差を感じ、新しい言葉を知つた小さな喜びと、その兩方に嘖(さいな)められた。時代はゆっくりと動いてゐるのだ。

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2013年1月 9日 (水)

睨まれる

 姪にせがまれ、かみさんも一緒に淺草公會堂で新春吉例、若手による「新春淺草歌舞伎」を觀る。

 第二部は《彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)》より、〈毛谷村(けやむら)〉。堂々とした六助藥の愛之助もよいが、お園役の壱太郎がよかった。立ち回りもでき、女形らしい、しおらしいところもあり、若々しいので溌剌として、觀てゐて氣持ちがいい。そして、壽初春《口上》は、ご存知、海老藏の睨まれたからには、今年一年無病息災になる筈。縁起がいい。
 そして、肝心の歌舞伎十八番の内《勸進帳》は、愛之助の富樫、海老藏の辯慶、孝太郎の義經と云ふ次世代の配役がいい。長唄は店で時折流してゐる所爲か、「旅の衣はすずかけの…」と耳に聞き覺へがある爲、初ッ端から舞臺に集中できた。白紙の勸進帳の「讀み上げ」はそれなりに緊迫感もあつたが、續く、富樫の問ひに對する辯慶が應じる「山伏問答」の掛け合ひは、張り合ひがなく殘念であつた。この大事なところで、睡魔に襲はれてしまつた。

 そして、最後に振る舞ひに、なみなみと注がれた酒を頂き、「延年の舞」には切れがあり、幕切れの花道を下がる時の堂々とした「飛び六法」は圧巻。これを見られただけでもよしとするか。前回、幸四郎が息も絶え絶え、疲れ切つてゐたのと違ひ、さすがに十八番だけあつて、決まつてゐた。

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2013年1月 8日 (火)

噫、無情!

 今、話題の映畫《レ・ミゼラブル》を觀た。あのヴィクトル・ユーゴーの長編小説をよく2時間に纏めたものだと感心した。勿論、舞臺音樂劇(ミュージカル)が元にはなつてゐるが、ほぼ粗筋はそのままに、俳優たちに歌の教育を施して全編歌はせたのが功を奏し、大成功したのであらう。普通なら吹き替へで別の歌手が歌ふところなのだが、ヒュー・ジャックマンやラッセル・クロウのやうに筋骨隆々でならした俳優陣もよく歌へてゐたことに吃驚した。

 また、佛蘭西革命後の混亂期、1815年からルイ18世・シャルル10世の復古王政時代を通し、七月革命後のルイ・フィリップ王の七月王政時代の最中の1833年までの18年間が市民の目線で巧く捉へられてゐる原作通り、それが最新技術で映像化されると、臨場感この上なく、あたかもその場に一緒に居るやうに感じさせられた。未だ、見てゐないのなら、お勸めする。

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2013年1月 7日 (月)

新人

Natuki1 2月6日のCDデビュー前に川上大輔さんの生歌を聽きに、ラジオ日本へ。FBの知人から是非、生の聲を聽くべきだと云はれて、「夏木ゆたかのホッと歌謡曲」のスタジオ觀覧に應募したら、大當たり。

 100名位の大講堂での収録かと思つたら、普通に局内の小さなスタジオ内の関係者の間で、「本番」の一聲にも緊張し乍ら聽くことができた。歌の間も滑らかに對應する小沢亜貴子さん 川上大輔さん本人、そして、笑顔の素敵な山口瑠美さんの3人の歌聲をほんの3米位の距離で聽けた。初登場から20周年、15周年と云ふ熟達演歌歌手の間で、高い音ながらやや擦れた獨特な聲を披露してくれた。クラシックと違つて、マイクロフォンを使ふとは云へ、迫力滿點。

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