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2013年4月22日 (月)

親方

 東京春祭のワーグナー、樂劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》はN響、指揮ヴァイグレの演奏會形式であつた。奇を衒つた下手な演出よりも純粋に歌が樂しめる演奏會形式の方がいいことがある。歌手は出番に合はせて、きちんと出入りもするし、僅かに身體を傾けたり、表情だけでも演技をしてくれるので、却つて想像力も増すし、今迄に觀た舞臺を容易に思ひ浮かべることができるのだ。

 誰が何と言はうとも、斷突にフォークトのヴァルターの素晴らしさは抜きに出てゐたが、藝達者なエレートの憎めないベックメッサーもとても好感を持ち、威嚴のあるグロイスベックはポーグナーだけでなく、一寸役の夜警もこなしたのが粋であつた。急遽出演の決まつたガブラーのエファも品があって初々しかつた。肝心のザックス役のヘルドは譜面を見すぎて俯き加減で、折角のよい聲が通らず残念。

 ヴァイグレには今後にも期待したい。段々と乘り、特に三幕は觀客をぐいぐいと引き込む演奏を綿密に練り上げてゐたのだ。また、ワーグナーが織り込んだ音樂動機が期せずしてひょっこり顔を出すので、毎回新しい發見がある。今回は 稀にみる好演故に、休憩を入れて五時間半を退屈せず、ほんたうに樂しめた。

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