インバル指揮、都響によるマーラーの交響曲第8番《一千人の交響曲》をみなとみらいホールで聽いた。これは初演の際に、オケの他、獨唱、合唱、兒童合唱それに特殊樂器やバンタ(觀客席側乃至舞臺袖で演奏する)などを含めて、實際に1,030人の出演者となり、興行主の宣傳通りとなつたものである。
それだけ出演者が多いと東京で聽かうにも、否、世界でも毎年聽けるものではないので、可能な限り足を運ぶやうにしてゐる。マーラー自身が「宇宙が鳴り出すと思ってください」と出だしを表現したやうに、オルガンの強奏から始まり、派手なのである。歌詞はラテン語と後半はゲーテの《ファウスト》科白から取られてゐる獨逸語だが、幾度も聽いてゐるうちに何語だらうとどうでもよくなつた。
初めて耳にしたのは早稲田の創立百周年の折、高校からワセオケに入部した友達に切符を貰つて行った1982年のことだから、勉強不足が祟って壓倒的な印象だけであつた。その後、ショルティ指揮、シカゴ響のLPで聽き込んで、1987年の東伯林のシャウシュピールハウスで伯林市制750周年記念の折であつた。そして、歸國してからは確かインバル指揮の都響で過去に一度あつた程度と、非常に聽く機會の少ない大曲である。
今回はテムポもぐいぐいと引ッ張る疾風樣式で獨唱等を疲れさせずに歌はせ、非常に次元の高い、背中が幾度となくぞくぞくする素晴らしい演奏であつた。一度、バリトンが出だしを數小節間違へた時はひやりとさせられた他、ソプラノの聲が聽き取り辛い程度で、非常に滿足度の高い、忘れ得ぬ演奏會となつた。
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