西へ
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山梨はほうたうが有名だけれど、味噌汁に崩れた南瓜が入り、太い饂飩が店により差が大きく難しいので、蕎麦にした。鹽山驛に程近い奧藤第十分店。折角なので、B級グルメ大賞を取つた「モツ煮」も一緒に。
こってりと甘辛く、みたらし團子のやうな濃厚なタレに絡まったモツとハツが美味い。ビールが進む味はひ。かう云ふのは地元ならではであらう。
ほんとに東側には決まった道以外、殆ど歩いたことがなかつた。フリードリヒ通りを南北に走る地下鐵に乘って、佛蘭西(フランス)通り驛へ降りた。この最終日だけ、何故か氣温もぐっと下がり雨。目の前にはギャラリー・ラファイエットと云ふ佛蘭西系百貨店。何とも粋な計らいである。
中は、整然として見易い獨逸の百貨店と違ひ、案の定、意匠重視の見辛い店舗配置も佛蘭西らしい。それでも、舊東側に在るだけでも凄いと思つてしまふ。その後、ウンター・デン・リンデンに出ようと思つて、南北逆に歩いたら、今度は昔の東西唯一の窓口、チェック・ポイント・チャーリーに出くわした。
銃撃戰があり、スパイ交換があり、車の中に隠れたり、西側に脱出するのに樣々に工夫され、亡くなった方も多い場所である。それが、唯の觀光名所で、その爲の寫眞用に役者が露西亞兵と亞米利加兵の格好をしてゐなければ、此処がそこだとも氣附かないであらう。もう統一から20年以上經つてゐるのだから、當たり前なのだが、何だか今回訪ねて、初めて統一感を新たにしたと云ふか、追憶も終えられた。
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東西冷戰の頃は伯林に中央驛はなくて、西側は動物園驛を主とし、東側は東驛を主として使つてゐた。「ツォーローギッシャーガルテン(Zoologischer Garten)」を約めて「ツォー(Zoo)」と呼んでゐたが、公衆便所の臭ひが漂ひ、立ちんぼがゐて、麻藥の賣買もあり、東から特赦でやって來たおばあさんたちがバナナを大量に買ひ込んで家族との別れを惜しむ、一種獨特な雰圍氣であつた。今ではごく普通の驛に成り下がってしまひ、變に健康的で明るい驛となつて、觀光客が溢れてゐる。
さて、2006年の蹴球、世界杯獨逸大會に合はせて、運河脇のレアーター驛を改築して、硝子張りの「伯林中央驛舎」が完成した。建設途中は見たことはあつたが、今回初めて利用した。
地下2階には地下鐵、地下1階には近距離列車、地上階は中央移動路となり、地上2階に市電、地上3階に長距離列車と云ふ立派な現代建築である。獨逸の首都たる顔だから仕方ないにしても、或る意味詰まらない。最近、評判を落としてゐるDB(獨逸鐵道)の案内係には長蛇の列、切符は全自動の機械だけ。面白味に欠ける驛となつた。
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伯林の舊東側の歩行者用信號は可愛いらしい男の子の進めと、女の子の停まれであつた。東西統一で順繰りに撤去されてしまひ、それが惜しまれて、アムペルマン・グッズとして商品化されて流行つた。今では日本にも出店して簡單に買へるやうになつた。
其の爲、昔の信號の意匠に戻された。但し、きっと燈火は最新式なのであらう。
舊西側にも廣がりつつあるので、歩いてゐて、どちらにゐるのか、分からなくなる。
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伯林にゐれば、久し振りに會ひたい友人ばかりで困る。ポツダム廣場のソニーセンター内のワインバー、ルター&ヴェグナーでワイン談義をし乍らの晝食。と云ふかワインの説明を山ほどした。シュペートブルグンダーに合はせたのは、ザウアーブラーテンと云ふ古典的獨逸料理。酢漬け牛肉を煮込んだもので、とても美味。
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西伯林で最も有名なカフェ・クランツラーは赤白の庇(ヒサシ)に四角い建物に丸いテラスが目立つ。でも、ずっと這入ることもなかつたが、この度、友人との待ち合はせで初めて利用した。朝食をたっぷり摂ったので、晝食代はりのアプフェルシュトゥルーデル(林檎の薄皮パイ)。林檎の他に木の實が入り、シナモンが効かせてあつて、ヴァニラ・アイス添へ。昔ならこれにザーネ(ホイップクリーム)も添へたであらうが、今はそこまで要らない。日差しの強い午後、珈琲と共に食べて語らふ貴重な時間となつた。
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