演奏旅行
学生に同行して、震災復興祈念ジョイントコンサート演奏旅行で仙台へ行って来た。
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出演者から切符を頂き、日本青少年交響樂團 特別演奏會を聽きにサントリーホールへ。トヨタが出資して、青少年オーケストラ・キャンプを開いてをり、それに參加した學生のオケである。
オケの後ろのP席故、後ろからオルガンが、前からオケが聴こへ、久しぶりに演奏気分が味はへた。廣上淳一の指揮は見やすく、一緒に呼吸するので、入りやすい。
満面笑みで振る廣上は、入りが上手くいくと、左手の親指を上げてOKサインを出し、人一倍演奏を楽しんでゐる感じ。
色彩感豐かな〈ローマの松〉、かなり難しさうなショスタコの提琴協奏曲1番を三浦文彰は完璧に弾きこなし、元氣いっぱいの「ガン付」では、血沸き肉躍る、喜びのほとばしる演奏であった。終演後は心地よく、雨も上がり、氣持ちよかった。
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連休最終日は學生の「追ひコン」に招かれ、宴會だけ參加した。それに伴ひ演奏會もあつたが、犬の散歩で出られず、万全の態勢で宴會へ行くと、長らく就活で顔を見せなかった卒業生も大勢ゐて懐かしかった。
狭い會場で管と弦に別れ、トラムペットはもうひとりOGが來た爲座席が足りず、とロムボーンに迎へ入れられ、一緒に鍋をつつく。安い會費なので、えっこれだけ?と思ふ食べ物しか口に入らず、ビールも足りず、學生と共に莫迦話をし、獨逸の思ひ出や、卒業生が新入生の頃の話などに大笑ひ。すっかり若返つた氣分で歸宅した。二日酔いにならず助かった。
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連休初日の晩、第二回 獨逸男子會を陳家私菜 渋谷店で開いた。二年前に一緒に獨逸へ行ったAGOの學生たちと、新たに加はつた一年男子。主に卒業を控へた四年生との思ひ出話ばかりになつたが、よく一緒に旅行に行けたと思ふし、この四年間によくぞここまで成長したものだとも感心した。
從業員が皆中國人で中國語が飛び交ひ、春の割引料理に更に加へて、團體割引が利き、幹事さん無料、燒小龍包、北京ダックも追加され、飲み放題プラン故に、大賑はひとなつた。一年生は未成年なので、氣の毒だがコーラだの烏龍茶やジュースで我慢して貰つたが、珍しい前菜や北京ダックには大はしゃぎしてゐた。
唐辛子の薬味だけを皮で包んで、遅れて來た奴にそっと渡して、反應を見るやうな惡い遊びもしてゐたが、皆樂しんでくれて、とてもよかった。
歸へり際に新四年生のチューバの子にバック社のC管ピストン・トラムペットを、新二年生の喇叭の子にヤマハのB♭管ロータリー・トラムペットを譲り、今後も吹いて貰へることとなったのも嬉しい。長いこと吹いてゐないので、鳴りが惡いが、練習する内にいい音が戻るであらう。特にロータリー獨特な音色は失はれてゐないのが確認できた。今後が樂しみだ。
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インバル&都響のマーラー・ツィクルス最終章、交響曲第9番をみなとみらいで聽いた。前回の8番が壓倒的規模の音の渦にどっぷりと浸かり、久し振りの感動を味はつたので、期待はしてゐなかつた。
極めて中庸を保つたテムポで遅すぎず、じっくりと聽かせてくれる。第三樂章ロンド・ブルレスケは崩壊寸前まで煽り、恐ろしく速いがその分、第四樂章のアダージョが活きてくる。特に弦樂器は歌はせ、歌はせ、これでもかと盛り上げるのが素晴らしい。何度もうなる聲が聞こえて來るが、嫌味がない。そして、「死に絶えるやうに(ersterbend)」と云ふ最終小節後、指揮棒は直ぐに下されず、無音の餘韻をたっぷりの殘してから、息を吹き返したやうに、割れんばかりの拍手に應へてゐた。誰一人として飛び出して拍手をする者もないのも素晴らしかった。この數十年で聽衆の質も向上したのであらう。何度聽いてもよい曲だ。
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インバル指揮、都響によるマーラーの交響曲第8番《一千人の交響曲》をみなとみらいホールで聽いた。これは初演の際に、オケの他、獨唱、合唱、兒童合唱それに特殊樂器やバンタ(觀客席側乃至舞臺袖で演奏する)などを含めて、實際に1,030人の出演者となり、興行主の宣傳通りとなつたものである。
それだけ出演者が多いと東京で聽かうにも、否、世界でも毎年聽けるものではないので、可能な限り足を運ぶやうにしてゐる。マーラー自身が「宇宙が鳴り出すと思ってください」と出だしを表現したやうに、オルガンの強奏から始まり、派手なのである。歌詞はラテン語と後半はゲーテの《ファウスト》科白から取られてゐる獨逸語だが、幾度も聽いてゐるうちに何語だらうとどうでもよくなつた。
初めて耳にしたのは早稲田の創立百周年の折、高校からワセオケに入部した友達に切符を貰つて行った1982年のことだから、勉強不足が祟って壓倒的な印象だけであつた。その後、ショルティ指揮、シカゴ響のLPで聽き込んで、1987年の東伯林のシャウシュピールハウスで伯林市制750周年記念の折であつた。そして、歸國してからは確かインバル指揮の都響で過去に一度あつた程度と、非常に聽く機會の少ない大曲である。
今回はテムポもぐいぐいと引ッ張る疾風樣式で獨唱等を疲れさせずに歌はせ、非常に次元の高い、背中が幾度となくぞくぞくする素晴らしい演奏であつた。一度、バリトンが出だしを數小節間違へた時はひやりとさせられた他、ソプラノの聲が聽き取り辛い程度で、非常に滿足度の高い、忘れ得ぬ演奏會となつた。
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我々學生の時は4年の秋定まで乘り、12月のヘンデル《メサイア》で卒業する形式であつたが、最近は3年の秋定で終はり、卒業式前に4年生中心に卒業オケなるものを急拵へで演奏するのが一般的なやうだ。
今回はベートーヴェンの《運命》とチャイコフスキイの5番。誰にでも親しまれてる名曲を先輩指揮者にお願ひしてゐた。午後の本番には横濱で別オケの切符を既に手配してゐたので、ゲネプロ(舞臺)だけ聽く。樂章毎に通して、問題箇所、氣になる箇所を指摘、修正して完全な形に仕上げるので、久し振りに經過樂しめた。
最後だと云ふこともあり、それぞれに氣合ひが入り、舞臺練習と思へない程の氣迫を感じたが、若々しい、學生の青春の息吹を感じた。
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高校の後輩でオルガニストの大平さんからお知らせを頂き、井上道義指揮、日フィルの「ガン付」を聽いた。ほんたうはサン=サーンスの交響曲第3番ハ短調 作品78《オルガン附》と云ふのだが、近頃は何でも省略するのでかう云ふと學生から聞いたのだ。
最初の一曲目は、同じサン=サーンスの《絲杉と月桂樹》より〈月桂樹〉と云ふ短い曲も、オルガンが入ると俄然華やいだ感じになる。大平さんの演奏は昨年の修士卒業試驗に當たる學位審査會公開演奏會以來。昨年9月にお住まひのヴュルツブルクで一献交えて以來でもある。
今回は二階中央最後列で聴いたので、真正面にオルガン奏者が見え、落ち着いて演奏してゐる様子がよくわかった。休憩後の「ガン付」には衣替へして力演。指揮者、井上がひとり張り切って、オケもよく鳴ってはゐるのだが、前日に戦車大隊の突撃のやうな怒涛の演奏を聴いたので、佛蘭西のエスプリとかではなく、日本人らしい淡白さにほっとする反面、ややもの足りなかった。
樂屋に真ッ先に驅け附けて、勞をねぎらひ機山のスパークリングを手渡す。井上さんから色々學んだとの由。今後がますます樂しみである。
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テミルカーノフ指揮、サンクト・ペテルブルグ・フィルのマラ2を聽いた。我々にはムラヴィンスキイ指揮、レニングラード・フィルの名前の方が親しみがある。
露西亞人のマーラーが一體どうなるのか、想像付かなかつたが、初ッ端から、重々しく泥臭い露西亞ぽさに溢れ、ジューコフの戰車大隊が突撃して來るやうな迫力な上、ロッケット砲・カチューシャの波状攻撃を受けたやうな衝撃的な演奏であつた。75歳の指揮者がどうして、これだけのものを引き出せるのか不思議。
併し乍ら、最少音のpppがない代はりにfffffまである感じで、全て音が大きく、獨逸のオケに慣れた耳には洗練さは微塵も感じないが、壓倒的な力に平伏してしまつた。獨唱の森麻季と坂本 朱も、露西亞ぽい母音を強調した發音と間合ひでぴたりと嵌り、これにも吃驚。それでゐて、オケには全く気負ひと云ふものがなく、いつも通りに演奏してる餘裕すらあった。
期待はしてなかつたので、久し振りに背中がゾクゾクするやうな感動を覺えた。
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