第三帝國の音樂
早稲田大學音樂同攻會創立75周年記念講演會に、幾度もお世話になつた山崎浩太郎さんが出られると聞いて、學生會館地下B101號教室へ赴く。入場無料、先着順と聞いて、開場30分前に行ったら、まだ誰も居らず、周りの廊下ではワセオケの學生が練習してゐて五月蠅いので、學食で名物オムライスを食し、開場を待つことに。
自分の母校とは明かに雰圍氣が違ふ、華やかさのないのが微笑ましい。學生の頃はああしてよく壁に向かつて練習したものです。知らない人にはさぞかし傍迷惑であつたことでせう。
主題は「第三帝國とクラシック音樂」と云ふことで、珍しい音樂系翻譯ものを手掛けるアルファ・ベータ社長中川右介との對談でした。現役學生幹事が司會を勤め、最初に佛蘭西のテレビ番組を觀て、それから當時の實況録音や最先端技術の音を聽き、途中で意見を伺ふ形式で、お二人の對談だけを樂しみにしてゐた自分としては、やや肩透かしを食らつた感じでした。
最初見たものはお藏入りの作品で非常に珍しい映像も多々ありました。1988年にバイエルンに在る「ワルハラ」を訪ねたことがありますが、そこにブルックナーの胸像を安置する儀式がヒトラーによつて行はれたこと、占領したプラハに獨逸人音樂家のモオツァルト像を設置したことなど、時代背景を知らないと只のニュース・フィルムに終はるところ、山崎氏が詳細に説明。
併し、ナチス自身の理念を音や映像で殘した爲に、戰後は逆に領土を蹂躙された國により惡の帝國としての証拠を突き附け、ニュース・フヰルムも映畫も自分たちの都合のよいやうに編輯してゐた嚴しい内容の番組でした。
また、戰時中とは思へないやうな明瞭な音像(テープ録音)が廣がり、スタジオの録音を蓄音機で聽くのとは違つた趣がありました。
價値觀が多様化した21世紀の今から見れば、西洋論理の進み過ぎた或る時代の証拠として明確であり、惡と言ひ切れるところがやや切ない。ナチスは賛美せずとも、プラモデルで親しんだ軍服や當時の録音まで云々するのはどうかとも。小室哲哉が詐欺容疑で逮捕された途端に、彼の曲まで自粛する放送業界はおかしいと中川氏。確かに、そんなことを言つたら借金まみれでも絹の肌着しか着なかったワグナーの作品なんかどうなることやら。過剰反應を引き起こす日本も危うい國なにかも知れませんね。映像を見て、色々考へることができました。
自分たちで触れられたくない過去を真正面から見つめようとする獨逸人の考へ方は凄いと思ひます。折しも、「帝國のオーケストラ」が上映中です。
http://www.cetera.co.jp/library/library_img/teikoku/orche.wmv
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